■2018年3月11日 横浜DeNAベイスターズvs日本ハムファイターズ
「ひゃっほう! MAXは大丈夫そうじゃないの」
「まっくす……?」
上機嫌で喜んでいる結乃を見るのは嬉しいが、意味がわからず理衣は首を傾げる。
「ドラ1の東くんよ。東といえば東MAXでしょうが」
お下げを揺らしながら答える結乃。
テレビを観れば、その東投手がマウンドで投げている。上背はなく、むしろ小さくて可愛い感じだけれども、投げている様子は堂々としており相手打線を抑えこんでいる。
昨日は石田が被弾し、エラーも多く、最後はサヨナラ負けとあって機嫌を悪くしていた結乃だったが、今日は今のところ笑顔なので理衣もホッとする。
「ちょっと球数が多いけれど、プロ一年目だしその辺はこれから修正していってもらいましょうかね」
腕を組んで偉そうに上から目線で言う結乃だが、ファンなんてまあこんなもんなのだろうと思うことにしておく。
「でも打線はプーさんのホームランだけかぁ。それなりにランナー出しているのにあと一本が出ない、まあいつもの通りね」
ため息を吐き出しつつ、どこか諦観にも似たような表情を見せる結乃。
テンションが変わったのは6回裏だ。
「お、櫻井くんが登板。この子、高卒ドラ5なんだけど一軍でここまで投げられるとはね。今日は清宮くんとの対決が楽しみだけど、さすがにそこまで打順は回らないかしらね」
そう言う結乃だったが、予想に反して櫻井の調子がイマイチなのか、制球が定まらず四球を連発してランナーをためてしまう。あと一人、ランナーを出したら清宮まで回るが、果たしてどうなるか。
「おおっ、大田を敬遠って、清宮くん勝負! ラミちゃんも魅せるね、分かってるね!」
これには理衣も驚いた。いくら右の強打者が相手で次が相性の良い相手とはいえ、走者を三塁まで進めてまで対戦させるとは。
しかし櫻井は期待通りに清宮を三振にきってとった。1イニングで四球を4つ出すのはいけてないが、とにもかくにも0点に抑えたのだから高卒ルーキーとしては良いのだろう。
「お、とうとう将軍も登板ね。うん、問題なさそうね」
「凄いヒゲだね……」
「問題は三上よね。去年はかなり……って、暴投で失点って、しかも2塁ランナーが一気にホーム生還って、これじゃ前のまんまじゃないのっ」
イニングが進むごとに結乃が不機嫌そうになっていく。追加点は取れず、ミスからの失点で同点にされたのだから致し方あるまいか。
さらに最終回、1死1、3塁とサヨナラのピンチを迎える。オープン戦とはいえ2試合連続でサヨナラ負けなんて嫌すぎる。絶対に結乃が荒れる。なんとか抑えてほしいと、マウンド上でダイナミックなフォームで投げる素敵メガネさんに祈りを捧げる理衣(進藤投手ということをまだよく知らない)
「ああっ!?」
打者の打球はセンターへの飛球。これは犠牲フライになるかと思った理衣達だったが。
「――――やった、すごい神里くん!」
「格好いい!」
センター神里のバックホームで三塁走者はタッチアウト、どうにか同点で試合を終了した。
「んふふ、神里くん良いじゃない。ヒットも打って、守備でも魅せて、こりゃ桑もうかうかしてられないわね」
良いところを見せられて、勝てはしなかったが結乃も気分良さそうだった。
「東くんの好投、神里くんの活躍と、ドラ1、ドラ2が当たりの予感! 佐野クンも相変わらず好調だし、こりゃ外野は桑も梶もどうなるかしらね。乙坂くん、関根くん、やばいわよ本当に」
去年までいた選手を心配する言葉を発しながらも、結乃は非常に嬉しそうな表情なのであった。
3月11日の試合結果
△ファイターズ 1-1 △DeNA
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