「ここにきて2試合連続で雨天中止とか、番長の呪いかしらね」
「なんで三浦さんがベイスターズを呪うのよ」
従妹である結乃の呟きに反論する理衣。もちろん、結乃が本気で言っているわけではないことは分かっているけれど、突っ込まなければ突っ込まないで、結乃の機嫌が悪化するのである。可愛い従妹であるが面倒くさいところも多い。でも、そんなところが好きだと思ってしまう自分がだめかもしれないとも思う理衣。
「開幕ローテを考えるためにも重要なのに。バリオス、熊原、誰をローテに入れるか。濱口、ウィーランドが少し遅れるだけに、この見極めは大切よ」
「他の選手にとっても、実戦で感覚を取り戻したいもんね」
特に主力では桑原、筒香のあたりが出ていないのが不安材料である。筒香に関しては、シーズン通せば結果を残してくれるとは思うが。
「でもやっぱり、投手よね。野球はピッチャーよ、今年の投手陣、層が厚くなったとはいえ不安も多いから」
実際の試合で投げてこそ分かるものがある。
この中止で先に挙げた2選手だけでなく、井納、東といったところも投げる機会を失したのではないだろうか。二軍で投げるというのもあるが、やはり一軍とでは相手打線のレベルも異なるはず。
「相手チームも同じ条件だし、仕方ないよ」
「ドーム球場が本拠地のチームとは違うけどね」
「確かにそれはそうだけど、私は屋外球場の方が好きだよ。天候に左右されるけれど、解放感はやっぱり全然違うし、天気による作戦とか考えるのも面白いし」
「あら、理衣ちゃんも随分と分かってきたじゃない。暑さ、寒さ、風なんかと戦うのも醍醐味よね。これは決して、僻みでもなんでもないんだから」
時に信じられないような試合となることもあり不公平とも思えるが、それを楽しむくらいの気持ちで観戦し、応援したい。
「中止になって残念だったのは、阪神戦で憲晴と戦えなかったことね」
「山崎さん、だよね。私はあんまり試合で見たこと無いけれど」
最近、試合を観始めた理衣は首を傾げる。
「内野ならどこでも守れるユーティリティだけど、憲晴の価値はそれ以上にチームに対する“献身”よね。縁の下の力持ちポジションだけど腐らず、常に声を出して味方を鼓舞する、キャプテンタイプよ。DeNAでは怪我と若手の台頭でチームから出ざるをえなかったけれど、阪神で輝いてくれると嬉しいわ!」
頬を紅潮させ、自分のことのように嬉しそうに言う結乃。恐らく山崎憲晴という人は、他のファンからもこのように思われる選手だったのであろう。
「あともう一つ残念なことは」
「まだあるの?」
「今年はたった3試合しかない横浜スタジアムでのオープン戦が2試合も中止になっちゃったから、売り上げ的に……」
「また、それを言う?」
「ま、オープン戦だし、それほど痛くないのかな?」
「分かんないよ、そんなの」
さて、真実はいかに――