2017年、記録的な大敗を喫したヤクルトスワローズ。その成績は暗黒時代のベイスターズを想起させるが、中身は全く異なる。
暗黒時代のベイスターズは所属している投手、野手の全力を注ぎこんでの成績であったが、ヤクルトの場合はそもそも全力が出せていなかった。
怪我もなく単に不調だった山田は別としても、川端、畠山、雄平といった野手の主力を怪我で欠き、投手陣も期待された原、秋吉、小川、星と、連鎖するかのように一人、また一人と消えていった。
もちろん、セルフケアや球団として選手の体のケアを行い、怪我しないようにしなければならなかった。他のチームだって練習、試合は同じなわけで言い訳などしようもないのだが、事実として主力が一軍に少なかったのだ。
「今年のヤクルトは、さすがにそこまで酷くはない……と思うから、昨年のようなことにはならないと思うのよね」
などといっているところで早速、畠山が怪しい感じではあるが。
「打線はバレンティンに山田哲人、川端に雄平、さらに坂口やメジャー帰りの青木がいてと、昨年とは比べ物にならないでしょう。もともと打線の破壊力もあって優勝したようなチームなんだから」
怪我人さえなければリーグ屈指の破壊力をもつ打線となるかもしれないのだ。
「とはいえ、弱点はやはり投手陣よね。他チームと比べても見劣りするわよね」
ブキャナン、石川、ライアンといった名前はあがるが、強力投手陣とは言い難い。先発、中継ぎ、抑えと、どこを見てもコマ不足感は否めない。
但しもちろん、原や星といった投手は昨年も良いところを見せており、今年に花開くという可能性もあるが、未知数であることに変わりはない。
先発左腕もベテランの石川しからおらず、左打者の多いベイスターズとしては決してやりにくい投手陣ではない。
中継ぎ、抑えに関しても去年を考えると絶対的な選手が見つからない。この辺はやりくりをしていくのだろうが、果たして。
「だけどヤクルトで怖いのは、石井、河田の両コーチが入閣し、さらに宮本ヘッドが入ったことによる意識改革よね。そして青木の復帰による影響。なんだかんだいって野球はメンタル面の強いスポーツよ。能力、技術はあるんだから、一気に変化する可能性もあるわ」
ファミリー球団で緩いと評されていたヤクルトだが、厳しいコーチによって空気も変わってきていることだろう。
ベイスターズだってDeNA当初はそういった空気を変えることから始まった。ベイスターズとヤクルトが異なるのは、優勝した時の実力ある選手がごっそり残っていることだ。最下位に沈んだとはいえ、上位を窺うだけの力は持っているとみても良いだろう。
鍵は打線の復活、怪我人を出さないこと。投手陣は打線を信じて耐えること。
今年のヤクルトは、台風の目になるかもしれないと考える結乃だった。