2018年5月4日(金) vs 読売ジャイアンツ
結果:横浜0-0巨人
敢闘選手賞:投手陣
「スコアレスドロー!」
「結乃、それ言いたいだけでしょ・・・・」
試合終了して帰宅しながらの結乃の言葉に、理衣は苦笑する。
関内駅から東京方面へ向かう京浜東北線のホーム、多くのユニフォーム姿のファンに混じって、結乃と理衣も帰宅するところである。時刻は21時を過ぎている。
「いやー、菅野と石田の投げ合いで、5回終わった時点では7時前に試合終わるかと思ったんだけどね(注:17時試合開始)」
中盤まではお互いにサクサクと試合が進んだが、後半からは主に巨人の攻勢に耐える形で時間がかかり、終了してみれば結局は4時間ゲームとなった。
「まあ、今日はスタジアムに来る前から9割8分は負けると思っていたから、良しとしましょう!」
「ポジティブなんだかネガティブなんだか分からないね・・・・」
相手が菅野、横浜の打線は最悪ときたら、勝てると思う方が不思議である。投手の調子がどんなによかろうと、さすがに1,2点は取られるだろうと思うし、菅野相手に2点も失ったらかなり致命的である。
「今日勝つとしたら初回で点を取るか、宮崎の打球がホームランになるか、どっちかしかなかったわね」
かえすがえすも、宮崎の一打が惜しかった。風が吹いていれば、もしかしたら入ったかもしれないのに。
初回こそ乗り切れない感じの菅野だったが、それでもロペスの打席くらいから徐々に良くなりだし、2回以降はスタンドから見ていても打てるとは思えなかった。
「石田投手は頑張ったよね」
「そうね、中5日で少し早めにへばったけれど、6回無失点だから」
序盤から飛ばしたのだろう、初回は148キロとか出していたが、6回になると140キロ出るくらいまでに球速は落ちていた。
「そこから先は巨人の攻撃にむしろ助けられたわね。てゆうか、なんで岡本にバントさせるのかしら? これが優勝争っているゲームならまだしも、5月頭の試合よ。なんのために岡本をクリーンナップに置いているんだってのよ!」
「ちょ、声が大きいよ、結乃」
電車の中に入り、さすがに結乃をおさえようとする理衣だったが、近くにいた岡本選手のユニフォームを着ている巨人ファンの人も、その通りだとばかりに頷いている。
「その後も、無死2塁で無得点、ゲレーロの3盗失敗、無死1、2塁からバント失敗併殺・・・・本当、投手が良く投げたというべきか、助けられたというべきか」
巨人とすればカープに連敗し、菅野では絶対に落としたくないところだったろう。それが焦りにつながったのか。
しかし、立岡選手のバント失敗はしばしば見るのは気のせいか。
「連敗中で相手が菅野で負けなかったと良い方向にとらえて、明日に臨みましょう。明日はウィーランドと田口ね。巨人ファンは今年の田口の状態だと負け濃厚だなんて言っているけれど、今の横浜打線はそんな相手すら打てるか分からないから、良い勝負ができそうね!」
「いや、だからそれ、ポジティブじゃないよね?」
「明日のスタメンには浩康出そうね。そして何より主砲、ウィーランドが出るから、打線にも期待できるかも。もう、ウィーランド6番くらいでよいんじゃない? その方が点取れそうじゃない」
「ま、まあ・・・・」
否定できない理衣。ウィーランドのスウィング、そして実際の結果を見ると、本当にそのような気がするのだ。だが実際には相手打線を抑えてもらうことが先決、投手として今シーズンの1勝目を飾ってもらおう。
そうこうしているうちに、駅に到着して電車から降りる。
「あ、理衣ちゃん見て。横浜のユニフォームの人っ」
「本当だ、同じ駅を使っている人でファンの人、いるんだね」
電車に乗り、乗継をしているうちに、関内駅ではあれほど電車内にいた青いユニフォーム姿が減っていく。それでもこうして、家に帰る近くまでファンの人がいる。
なんだか、嬉しくなる。
「それで結乃、今日の『この人』は?」
「もちろん、コケたけれどフライを無事に捕球した宮本!」
・・・・いや、あれは本当に笑い話で良かったが、落としていたらアレで負けていたのだ。
珍しいものを見たものである・・・・