井納曰く、「あいつらはメンタルが課題」
「巨人戦から3連勝して良い感じだと思ったんだけどね」
「やはり先発投手、四球、エラー。ここがポイントで崩れていっているわ」
多少は持ち直したかと思えたものの、3勝3敗で終えた前の週。
勝敗はともかく、その敗戦の内容がいただけないだけに、上昇の兆しが感じられないのだ。
「何がいけないんだろうねぇ」
理衣の呟きは、シーズン当初から何度も言われてきた言葉である。
「その答えは井納が言っているわ、『あいつらはメンタルが課題』だと!」
「・・・・本当にそうなの?」
訝し気に問う理衣。
「そんなの素人のあたしに分からないわよ。でも、今永も濱口も二けた勝利し、石田だって9勝したのよ。衰える年齢でもないし、勝てるだけのものはあるはず。実際、抑えている試合だってあるわけだしね」
「それでも、序盤に打ち込まれる試合が増えているのは」
「やっぱりメンタル? なのかしら? まあ、宇宙人といわれる井納と比べられてもってのはあるでしょうけれど」
ビジターの相手の大観衆の中で力を発揮できる井納。
大舞台でも結果を出してこられた井納。
ただ、井納も色々と失敗し、うまくいかずにここまできたというのもある。
「正直、今年はもう彼らが立ち直るというのは厳しい気がする。でも、この壁にぶつかったことが、来年以降に活きると信じたいわ!」
「それは、きっと乗り越えてくれるという信頼だね!」
「いえ、そうでも思わないとやってられないからよ!」
「あぁ・・・・」
だが、この手の壁に跳ね返されて、ごく一時期の輝きで終わってしまった選手が数多いのは確かだ。
彼らには、この挫折を乗り越えて這い上がって来て欲しい。
そうでなければ、プロとして終わってしまうかもしれないのだから。
「三嶋だって這い上がってきた。出来ないはずはないのよ」
「三浦投手だって、もう引退か、なんて言われてから復活したしね」
「それと比べれば、いくらでも余地はあるはず。ただ、何をどうすれば這い上がれるのかを見つけないと厳しいかもだけどね」
井納は二軍で見つめ直してきた。もともと完成されている投手だけに、その力を発揮できるよう調整すればよかった。
三嶋は、ルーキーの時のような、高めに浮きあがるストレートで空振りを取れるようになった。
下半身の鍛え、そして基本に戻って自分の良いところを出す、ということか。
「こういう時に高城がいれば、なんか上手い事メンタルケアしてくれそうなんだけどね」
「うぅ、痛いトレードだったね」
「高城のためには良かったのかもだけど、痛いわよね、チームとしては」
とはいえ、そんなことを言ったところで今さらせんないこと。
痛みの代わりに、GG、ベストナインの捕手を獲得したのだから。
「さて、週がかわって中日との裏天王山!」
「悲しいけれど事実だから仕方ないね・・・・」
「ここは先週と同じ平良、井納、東でしょうね。平良も正念場だから、気合いれてもらわないと」
「相手はガルシア投手、厳しい対戦だね」
「それでも、ガルシアからはそこそこ点を取っていたりするのよね。やっぱり先発よ」
「勝ち越して最下位脱出しよう!」
「そんなこと言っていたら駄目よ。3連勝するのよ!」