2018年10月6日(土) vs 阪神タイガース
結果:横浜3-4阪神
敢闘選手賞:ソト
理衣が部屋に入ると、結乃がうつぶせの状態で倒れていた。
「結乃っ!? ど、どうしたの!?」
慌てて駆け寄る理衣。
結乃の傍らに膝をつき、助け起こそうとしてハッと、息をのみ込む。
理衣の視線の向けられた先、結乃の手が新聞のテレビ欄に置かれていた。その人差し指が指していたのは。
「・・・・『西郷どん』? え、なんで?」
「大河ドラマよ! 大河、タイガー、タイガース!」
むくりと起き上がり、いまいましげに先週の新聞紙を踏みつける結乃。
「あーもう、こんな小芝居でもしないとやってらんないわ、本当に!」
「いや、わざわざ先週の新聞を取り出してまでやるほどのことじゃあ・・・・」
「そうでもしないと、言うことが無いのよ! それくらいの試合だったわ!」
「でもほら、ソト選手が同点3ラン!」
「あれは確かに凄かったわ。ここで打ってくれ、って場面で本当に打っちゃうんだもんね」
敗色濃厚の場面、まさにソト様様ではあったのだが。
「でも結局、一発だけじゃあ勝てないのよね」
しわくちゃになった新聞紙を折りたたんで片付ける結乃。
「相変わらず藤浪に手も足も出ない打線! 特に初回、連続フォアボールの藤浪に対し、ロペスがゲッツー!」
崩すとしたら立ち上がり、不安定であった藤浪をあっさりと立ち直らせた。
その後はすいすいと7回まで行かれてしまった。
「攻撃陣では筒香選手、ロペス選手がブレーキだったね」
「特に筒香、4打席連続三振って、どんだけやる気がないのよ!?」
「いや、やる気があれば打てるもんじゃないよ」
「だとしても、リーグ最低の得点圏打率は事実でしょう?」
「う、それは・・・・」
もちろん筒香とて一生懸命やっているのだろうが、やはり結果が欲しい。
今や期待枠で出ている若手ではないのだから。
「打線もそうだけど、守備もねぇ」
結乃の怒りは守備にも向けられる。
「あぁ、大和選手。怪我明けだから、ほら」
「とはいえ、守りなれている筈の甲子園で、大事な試合に。大和のエラーって失点につながるわよねぇ」
シーズン中盤以降は安定していたのだが、ここにきて痛いエラーであった。
「それに外野も。センター乙坂、ライト佐野とか、甲子園でとる守備体形じゃあないわよね。それ以上に打てるならともかくねぇ」
「容赦ないねぇ」
「さて、これでもうCSはなくなったわけだけど」
「まだなくなってないよ!? 巨人さんが負ければ」
「うちが3連勝して、かつ巨人が負ければ、でしょ。もう、なんで阪神は横浜相手にしたときだけ強いのよ」
「本当にねえ」
「ていうか、横浜が何の対策もできていないのもどうかと思うけどね。まあ、対策しても実行するだけの力がないと言われればそれまでだけど」
いずれにしても、既に崖から落ちて、崖の縁に片手でつかまっている状態になった。
「とりあえず、これ以上情けない試合を見せないで欲しいわ!」
「残り三試合、良い試合を見せてほしいね」
「そして、来年につなげる試合をね!」
「あ、あきらめの台詞・・・・」
とはいえ、まだ終わったわけではない。
本当に終わるその日まで、もっと我武者羅な姿を見せてほしいものである。