戦力外通告⑧ 父親越えならず 山本武白志
元ロッテの監督である山本功児氏を父親に持つ武白志。
悲願のプロ野球選手になることはできたが、残念ながら支配下登録をえることは出来なかった。
「武白志選手も網谷選手と同じで、育成3年で戦力外だって」
しょんぼりする理衣。
「うーん、網谷よりかはまだ妥当にも思えるけれど、まあ早いっちゃ早いわよね」
二軍でもなかなかヒットが出ないような日々が続いていた。
今季も打撃成績はパッとせず、長打力がウリのはずが本塁打は1本。
成績的には確かに厳しい。
「網谷と違って、注目されることもなかったわね」
「でも、ドラフトの時は注目されていたよね」
「父親が元プロ野球の監督で期待もされていたけれどね。ただ、指名したのはベイスターズが育成でのみ。それが実力だったってことなのかしらねぇ」
「高卒だし、まだこれから伸びてくるかもしれないのに」
「球団としてはそう見なかったってことでしょうね」
厳しいプロの世界。
育成で続けて契約する、という選択肢も無かった。
それが全てであろう。
「うーん。これで白根、網谷、武白志と、右の長距離として期待していた選手がばっさり切られたわね」
「さすがに、ドラフトで誰か指名するかな?」
「するでしょうねぇ。おそらく」
右の大砲を見る目がなかったということか。育成が駄目だったのか。
田代を招聘するということで、一から育てられるような素材を指名するのか。
それはこの先のドラフトで分かる。
「武白志選手はこの後、どうするのかな?」
「分からないけれど、若いし、お父さんのこともあるし、諦める必要はないわよね」
「そうだよね、網谷選手と同じく、これから上を目指してまだ研鑽する時間もあるしね」
「諦めたらおしまいだからね、あたし達は武白志という選手がいたということを忘れないから!」
「寂しい締めだねぇ・・・・」