2018年振り返り #21 泥沼にはまった哲学者 今永 昇太
「去年のCS、日本シリーズでの投球を見ても、2018年はエースの活躍を期待していたんだけどねぇ」
ため息を吐き出す結乃。
「調整の遅れはともかく、まさかここまで駄目とは思わなかったよね」
理衣もまた、肩を落としている。
きっと、多くのファンが同じように思っていることだろう。
#21 今永 昇太
当番試合 : 23
投球回数 : 84 2/3
防御率 :6.80
勝利 : 4
敗北 : 11
セーブ : 0
ホールド : 4
奪三振 : 80
ルーキーの年、そして2017年と順調に結果を残し、防御率も2点台だった。
それは2018年は、登板すれば打たれるの繰り返しだった。
「10点!」
「い、いきなり?」
「そりゃそうよ。勝手な期待だけど、本当に15勝とか期待していたのに」
日本シリーズで2試合に投げて両方とも二ケタ奪三振で更に株を上げた。
その今永が、このざまであったのだから仕方ないところか。
「何がそんなに悪かったのかな?」
「うーん、あたしも素人だから分からないけれど、キレなのかしら?」
首を傾げる結乃。
今永といえばストレート。
ルーキーイヤーから、140キロちょいくらいの球速でも、打席に立った打者からは「速い」、「打てない」などと賛辞を送られていた。
ところが2018年は140キロ台後半のスピードが出ていても簡単に打たれていた。
「難しいわよね、野球って」
「速ければ良いってもんじゃないんだよね」
「ストレートがあってこその変化球。特に今永だって、物凄い変化球を持っている、ってわけでもないからね」
「そういえば、パワーカーブを習得するって言っていたね」
「それが影響したのかどうかは分からないけれどね。もしかしたら怪我のせいかもしれないし」
「投手って繊細なんだねぇ」
「今永の場合、考え過ぎ、ってのもあるかもしれないけれど」
ルーキーの時から発言で周囲を騒がしていた。
それくらい考えてプレイをしているのだろうが、一度沼にはまるとそれが逆に悪い方向に働くのかもしれない。
「正直な所、一番心配なのは今永よね。石田は少し良くなったし、まだ期待がもてそうなんだけど」
「今永投手も後半、中継ぎに回っていたね」
「石田は中継ぎで良い結果出したりもしたけれど、今永はそうでもないのよね・・・・」
なかなかプラス材料の出てこない今永に、不安が募る。
「でも、ここを乗り越えれば・・・・!」
「何かきっかけが欲しいところ?」
「とりあえず何も考えずにやってみるとか。考え過ぎて自縄自縛に陥っている気もするし」
「それが出来るキャラクターなら良いんだけどね」
「あとは秋季キャンプで徹底的に下半身を鍛える!」
「疲れて何も考えられなくなるくらい練習!」
「2017年のキレを取り戻せば、怖いものなんてないんだから!」
お前の力がなければ優勝なんて遠い。
必ず復活を信じている。
ここから這い上がれ、今永昇太!