2018年振り返り #36 起死回生はスイッチ転向? 狩野 行寿
「カーリー、大丈夫かしら?」
心配そうな表情の結乃。
それを見つめる理衣の表情も同様である。
「ファームでもあまり数字、良くないもんね」
はふぅ、とため息の理衣。
そんな、ため息をつきたくなる狩野の二軍成績は以下の通りである。
#36 狩野 行寿
出場試合 : 68
打数 : 136
打率 :.199
安打数 : 27
HR : 0
打点 : 8
盗塁 : 5
「大卒2年目で、ファームで打率2割に届かないのは、ちょっとねぇ・・・・」
「なかなか厳しいよねぇ」
二人とも、なんともいえない感じで、言葉が出てこないようだ。
「長打を期待されているわけじゃないと思うから、粘り、出塁率とかで見せていかないとね」
まだまだプロのスピード、力強さに対応できていないというところか。
「二年目とはいえ大卒でファームでこの成績だからね。15点ってところで」
「辛い!」
顔をしかめる理衣だったが、強い反論はできなかった。
「守備練習の時とか、凄く元気だよね」
「そういう点は良いわよね。まあ、うるさいと思うこともないこともないけど」
「でも、奄美大島では見かけなかったよね?」
秋のキャンプ、怪我の無い若手は本来ならこぞって参加するはずであるが、狩野の姿はそこにはなかった。
まさか首が危ないのか、そう思っていたら違ったらしい。
「どうやら奄美大島の秋季キャンプに参加していなかったのは、残ってスイッチの練習をしていたからのようね」
「へぇ、スイッチ!」
驚いたように目を見開く理衣。
「コーチ陣がつきっきりで指導しているようよ」
「何か変わらないと、CHANGE! だね」
「右打席だけでは厳しいと、本人もコーチ陣も思ったんでしょうね。で、何か武器を身に付けないとと」
「大変そうだけど、頑張ってほしいねー」
右も左も苦にせず、小技なども出来るようになれば、生き残るための牙になるかもしれない。
練習量であれば狩野も負けないはず。
あとは、その努力が実を結ぶことを祈るしかない。
「カーリーはドラフト7位だからね、当然、ドラフト上位の選手と比べたら余裕はないわよ」
「厳しい世界だもんねぇ」
「大卒だから、3年目の2019年が勝負の年よ! いきなり大活躍なんてのはないでしょうけど、ファームで成績を大きく上げて、できれば一軍に少しでも出て何か首脳陣に印象を残さないと」
「きっと、やれる子だよ!」
「あたし達は見て、応援するしかできないからね」
1軍未出場というのもあるが、とかく地味な印象で目立たない狩野。
だが、もちろんプロに入ったということはスカウトの目に留まった何かがあったということ。
それが、花開いてくれることを願う。
「カーリー、待っているわよ!」
「二遊間は、まだチャンスがあるポジションだからね!」