FOR REAL ~遠い、クライマックス。~
「と、いうことで、『FOR REAL ~遠い、クライマックス。』観てきたわよ!」
ブルク13から帰ってきた結乃。
手には、ついでにランドマークのBAY STOREで購入してきた2019年のカレンダーがある。
「やっぱり、シアターで観ると迫力があるわよね!」
「ブルーレイも予約しているのにね」
笑いながら言う理衣。
「あれは、本編よりもおまけの方がメインだから!」
「それも、特別仕様の豪華版の方」
「15000円! あたしのお年玉を返せーっ!!」
「いや、それを見越して、好きで購入しているんでしょう?」
「全く、今までどんだけ貢いでいると思っているのよ!」
DeNAになってから、本当にこの手の商売がうまくなったものである。
「それより、肝心の映画の方の話をしないと」
理衣が逸れてしまった話を戻そうとする。
「そうね、でも詳しくしゃべっちゃうとネタバレになるから、ふんわりと伝えるわよ!」
「難しそう・・・・」
「なんといっても、今までで一番重く、苦しいと言われていたわね」
「シーズン序盤から、苦労していたもんねぇ」
「ただ、あたしが想像していたほど重くも苦しくも無かったわ!」
「えーっ!? そ、そう?」
「もっとこう、どん底感が欲しかったというか、ねえ?」
「ねえ、って言われても・・・・逆に、ねえ?」
戸惑う理衣。
「TBSの頃の暗黒時代に比べれば、重くも苦しくもないわよね。あたし達が求めていたのはもっと、こう、絶望的な何か!」
「そんなの嫌だよ!」
「ほら、基本的に昔からのファンってドMじゃない? このような球団を応援し続けるなんて」
「そんなことを、あっけらかんと言われても・・・・」
「だから、物足りないと思っちゃうのかしらねー。事前に、重くて苦しいとか吹き込まれていたからかしら」
「う、うーん?」
「大体、4位で絶望するなんてないもんね。昔は5位と10ゲーム差以上の最下位だったし」
「そういう、『昔は・・・』的なのはやめようよー」
「じゃあ、改めて見所を! そうね、印象的なのは今永が打たれているところばかりと、ロペスが怪我するところばかり」
「いやいや、見ていて辛いところばかりじゃない!」
「あとはー、高城のトレードに関するところが結構、尺を取られていたところね」
「あれは、高城選手の横浜愛を感じたね! 職員の人、スタジアムにいたおばちゃんたちからも愛されていたのがわかるよね」
そういう、辛いシーンは確かに多かった。
「淡々と進んでいった感じね。もっとこう、下げて上げてみたいなドラマチックな点は少なかったわね」
「まあ、ドキュメンタリーだから・・・」
無茶を言う結乃に対し、苦笑して応じる理衣。
そう、この作品はエンタメではなく、あくまでドキュメンタリーなのだ。
だから、盛り上げとかクライマックスとかオチとかそういうものがあるわけではない。
ありのままの姿を伝える、それこそが求めていたもの。
「そういった意味では、選手が苛立っているところとか、落ちこんでいるところとか、なかなか見られない姿が見られたのがよいわよね」
「選手達は、よく映して、作品にすることを許してくれたよね」
「自分だったら絶対に嫌よね! 弱いところは見せたくないし、イラついて物に当たっているところとか見られたくないもん」
そう、だからこそ価値があるのだ。
「悔しさ、不甲斐なさ、そういったものは十分に伝わってきたわ! あとは、その悔しさを次につなげないとね」
「そうだね、2019年は、歓喜の姿を見せてほしいもんね!」
「優勝したら、それこそ派手に優勝までの軌跡をたどった作品を作るでしょうからね!」
「1998年も作っていたしね」
「時代も進んだし、DeNAはその辺得意だから、期待しているわよ!」
もちろんその前提としての優勝が必要なのだが。
「さあ、『FOR REAL ~遠い、クライマックス。』絶賛公開中! 劇場にGO!」
「・・・・宣伝?」