2018年振り返り #54 頑張れ変則サイドスローの苦労人! 寺田 光輝
「ルーキーの寺田投手、残念ながら一軍登板はなかったね」
ため息を吐き出す理衣。
「社会人卒だからね、せめて一軍登板はして欲しかったわね。怪我があったのはあるけれど」
腕組みをしている結乃も渋い表情である。
寺田の二軍成績は以下の通りである。
#54 寺田 光輝
当番試合 : 13
投球回数 : 18
防御率 :6.00
勝利 : 0
敗北 : 1
セーブ : 0
ホールド : 0
奪三振 : 17
「うーん、二軍でもパッとしない成績ねぇ。大丈夫かしら?」
「う、ま、まだ一年目だし」
「だから、社会人卒の即戦力でしょうが。いきなり2019年が崖っぷちよ! 20点!」
結乃のいうことは間違いではない。
即戦力の中継ぎとして期待していたのだ。
齋藤とともに2019年は正念場であろう。
「見ていないから、どういう持ち味なのかもよく知らないのよね」
「そうねえ。経歴を見ると、三重大学を中退して二年浪人して筑波大学に入り、さらに独立リーグだからもう26歳!」
「社会人卒だと24歳くらいだと思っていたけれど、そうなんだね」
「苦労人であるだけに、頑張ってほしいし、応援したくなるわよね」
「うん、イケメンだしね!」
「・・・・また、それ?」
ジト目で理衣を見る結乃。
「でも、ほら、なんか可愛い感じのイケメンさんだったじゃない!」
「まあ、二軍のキャンプでサインしてくれたときは笑顔で感じも良かったわね」
「ほらほらー、結乃だって好きなタイプじゃない?」
「あたしは選手をそういう目で見ていないもん!」
感じの良い青年であったことは確かだ。
「入団時は、『ハマの便利屋』を目指し、皆が困っているのを助けたいって言ってくれたわね。そういう目立たない縁の下の力持ちを望んでいるところが、人柄を示している気がするわ」
「苦労してきたからこそ、なのかもしれないね」
「でも、プロだからね、結果を出さないと」
「変則フォームのサイドスロー、そこに活路を見出したいね」
「負けん気の強さもあるって本人言っていたし、勝つためならルール内でなんでもするっていうのが良いわね!」
「結乃が好きそうだよね」
「あらゆることを駆使して勝とうっていうのは、あたしの思いとも合致するわ!」
「思い出したけれど、ドラフトの時の反応が面白かったよね」
「ああ、名前を呼ばれたときね。『え、俺? 本当に俺? 俺なの?』みたいなのね」
「あの時、他に二人の選手がいて、自分が呼ばれるとしても最後だろうなって思っていたんだってね」
「そうしたら思いがけず自分が最初に呼ばれて・・・」
「しかも、隣に寺岡選手がいたから、「寺」と聞いた瞬間に寺岡選手だと思ったんだって」
「そう言う所でも、なんか分かるわよね」
だが、プロに入ったことは事実。
結果を出さなければならないことも本人は十分に理解している。
「まずは一軍で一度でいいから結果を出すのよ!」
「頑張って、寺田投手!」
苦労人からのシンデレラストーリーを期待しているぜ、寺田!