2018年振り返り #92 俊足の育成上がり投手 田村 丈
「育成契約から支配下登録された田村投手です!」
理衣が嬉しそうに手を叩きながら言う。
「育成で3年目、ようやくってとこね」
頷く結乃。
「一軍の試合でも登板したわね。結果はこうよ!」
#92 田村 丈
当番試合 : 1
投球回数 : 1
防御率 :18.00
勝利 : 0
敗北 : 0
セーブ : 0
ホールド : 0
奪三振 : 0
「うーん、やっぱり甘くはなかったわね」
「でも、ほら、まずは一軍のマウンドにあがったということで!」
「まあね、それがないと始まらないしね」
一軍のマウンドに上がれることもなく去っていく選手も多いのだ。
その中で一軍昇格し、一度でも登板させてもらえたのは期待されているからだろう。
「ということで、一軍登板したので60点!」
「スタートに立った、ってことだね!」
「ストレートは150くらい出るわけで、でもそれだけじゃ一軍は通用しないと分かったでしょう」
「キレ、球威、変化球の制度・・・・色々と大変だよね」
「それでも自分で選んだ道、精進してもらわないとね」
「基本は中継ぎでしょうけれど、先発投手すれば面白いのにね」
「その心は?」
「だって田村、足が速いんでしょう? 打席に立って内野ゴロとか打ったら面白そうじゃない」
「砂田投手が、自分よりも速いっていっていたもんね」
「そういう投手がいてもいいじゃない、なんて」
確かに、キャンプなどのダッシュでも田村がよくグループのトップを取っていたような記憶もある。
「まあ打席は冗談として、投手としての質を高めないとね」
「育成からあがった、だけじゃあ駄目だもんね」
「年齢だって26歳なわけで、もう余裕だってあるわけじゃあないから」
「2019年が勝負・・・・って、なんかそんな風に言っている選手が多いねぇ」
「プロは一年一年が勝負だから、当たり前なのよ!」
チームが若いから、まだまだ若いと思えても競争に敗れればチームから離れていくことになるのはやむをえない。
結果を出していくしかないのだ。
「でも、支配下登録されることなくクビ、なんてことになってないんだから、前向きにいかないと!」
「そうだよね、きっとチャンスはあるはず」
「一軍登録の枠が増えたからね。でもチャンスも多いわけじゃないだろうから、いかにチャンスをつかむか」
「そのためには準備が大切だから、声がかかる時に備えて二軍だとしても結果を出し続けると」
「当たり前だけど、当たり前の事をやれて初めて一軍で活躍できるんだからね!」
「おおおー、結乃がなんか真面目なことを言った!」
「ふっふっふ、まあね!」
「そこで威張るんだ・・・・」
何はともあれ支配下登録だけで浮かれていてはいけない。
本当のスタートをきってすぐに勝負どころである。
俊足のように、ダッシュでチャンスを掴みとれ、田村。