須田幸太 普通の人でいたかった
「これは良い記事だわ!」
大きな声をあげる結乃。
「え、なになに、あ、須田さんだ」
結乃が見ているPCの画面を覗き込みながら、理衣が言う。
「須田さんといえば、2016年だよね!」
思い出すように目を閉じて頷く理衣。
「あの年の須田は頼もしかったわよね!」
結乃もまた首肯する。
「正直、それまではドラ1で獲得したのはなぜ? と思っていたんだけどね」
「辛いね」
「だってそうでしょう、先発して大量リードの試合も追いつかれるような投手だったのに」
「またそれ・・・・その後、ヤクルトさんにはリベンジして完封したじゃない」
「でも、先発で目立った活躍もそれくらいだし」
実際、須田の先発での良いイメージはさほどない。
「中継ぎにまわって輝いた2016年、須田はこの年だけでファンの心に残ったわ!」
そういう選手は確かにいる。
それが幸せなのかどうかは分からないが、一瞬も光り輝かず去る選手が多い世界であることも事実。
そして須田は、それで良かったと、後悔などないと言いきってくれている。
「普通の人でいたかったです」須田幸太はベイスターズに殉じた。
暗黒時代にベイスターズに入った須田。
上昇の見えない中、12球団で最後にして目の前に近づいてきた3位、CSという姿。
それを目の前にして、痛いからやめるなんていう選択肢はなかったという。
今後、同じような活躍が出来て、同じようにチームが勝てるという保証もない。
須田幸太には「今」しかなかったのだ。
「ベイスターズに殉じたって、喜んじゃいけないのかもしれないけれど、それでも嬉しいわよね」
「そうだね、選手寿命は縮まっちゃったなら、悲しいけれど、それでも・・・・」
もっと長く活躍してほしかった。
でも、浪花節的な須田の考え、行動は、ファンの心を喜ばせてもくれるのだ。
「今さらどうこう言っても事実は変わらないわ。須田が悔いも未練もないと言ってくれているし、あとはこれからの人生を応援するだけよ!」
「そうだね、まだ社会人野球で続けるしね」
あの、伸びのある外角低めのストレートは見ていて気持ちが良かった。
登場曲、嵐の「GUTS!」も球場で盛り上がった。
間違いなく、ファンの心に残る選手だった。
「ということで、良い記事だから読んでね!」