2019年3月29日 中日戦
結果:横浜8-1中日
敢闘選手賞:今永、楠本
「何やってんじゃ康晃ーっ!」
2019年開幕戦を見事に勝利で飾ったというのに、結乃の口から出たのは怒りの声だった。
「結乃、勝ったんだし・・・・」
理衣が宥めようとするが。
「康晃がゼロに抑えていれば、あたしが怒ることもなかったのよ。あーもう、案の定の失点じゃない!」
相変わらず横浜スタジアムで成績のよくない山崎である。
「・・・・気を取り直しましょう」
呼吸を整え、結乃が言う。
「よーっし、開幕戦に勝利なんて、今年は何か起きるかも!?」
「開幕戦は苦手だったもんね」
「去年、やってよね・・・・」
2018年の開幕戦を現地観戦し、体も、試合も寒い内容だったことを結乃は思い出した。
「この日の試合はなんといっても今永! 8回無失点、11奪三振! これは本当に復活かしら!?」
「凄く気合も入っていたよね!」
ピンチを抑えた時、8回を投げ切った時、気迫を前面に押し出していた。
「やっぱり今永はストレートのキレよね。多少甘くなっても空振りが取れる」
「このままシーズン、いってほしいね」
「宣言通り、15勝以上してもらいましょう!」
「続いて、打線だね。ここはなんといっても!」
「楠本ね!」
「あれっ!? 筒香選手じゃなくて?」
違う名前が出てきて、思わず理衣がずっこける。
「つっつは、打って当然になってもらわないと。それより2打数2安打、3四死球、出塁率十割の楠本よ!」
「確かに、オープン戦の打撃は偶然じゃないところを見せてくれたね!」
慢心はしないと言っていた楠本、その言葉通りどころか、それ以上の結果を出してくれた。
「新たな天才バットマン、遂に爆誕!?」
「まだ1試合だけだってば」
さすがに苦笑する理衣だが、結乃は止まらない。
「いいえ、これは今シーズン、首位打者争いするわね!」
「大風呂敷!」
「理衣ちゃんはイケメンしか応援しないかもしれないけれど、野球は顔じゃないわよ!」
何気に楠本がイケメンではないとディする結乃であった。
「飛ばしちゃったけれど、筒香選手が先制タイムリーに駄目押し3ラン! 4番の仕事だね!」
「まー、最後のホームランは儲けものだけどね」
結乃が肩をすくめながら言うのは、前打者の柴田の打球を中日内野陣がお見合いしたことを言っている。
「それでも、開幕戦で1号は縁起が良いよ!」
「HRというか、打点よね。チャンスで打てたから良し、よ!」
2018年は酷い得点圏打率だった。
2019年こそ、100打点は突破してくれないと困る。
「代打の佐野選手もナイスタイムリーだね!」
「相手が前に守っていたのもあるけれど、逆方向にうまく打てたわよね」
なんだかんだ、あの一打が決めてではあったのだ。
「ロペス、大和もマルチだし、そこそこヒットが出たわね。まー、序盤はまた残塁祭りか、とも思ったけど」
中日の、特に高橋周平の好守に阻まれたとはいえ、なかなかタイムリーが出なかったのは事実だ。
「あとは、梶谷選手と宮崎選手だね」
「宮崎はそのうち帳尻合わせるでしょうけど、梶谷は大丈夫かしらね。打順、1番楠本、2番梶谷の方がよくないかしら」
「楠本選手が塁に出ていれば、梶谷選手も打ちやすいだろうしね」
「桑原を、とも思ったけれど、代打の打席を見ると、なんか振りがイマイチに見えるのよねー」
とりあえず、もう少し梶谷の様子を見て、というところだろうか。
「さー、なんと開幕白星スタート! 康晃に文句は言ったけど、幸先良いわね!」
「この勢いでカード勝ち越したいね!」