伊藤光、パットン、宮崎と、立て続けに主力が故障で消えていった8月前半。
最初こそ踏ん張っていたものの、主力不在も響いて4連敗中のベイスターズ。
このままズルズル落ちていくのか、踏ん張ることが出来るのか、分水嶺だ。
「ふ、匂うわね」
結乃が腕組みをし、不敵な笑みを浮かべて言った。
「え、な、なに、私、何もしていないよっ?」
頬を赤らめながら、理衣が慌てて否定する。
「ちがう、ベイスターズらしい連敗の匂いがすると言っているのよ」
「そんな匂い、したくないよ!」
「大型連敗のにおいかしら?」
「だから、自虐はやめようよ!」
敗戦の内容も悪く、流れも悪く、ネガティブモードに入りかけている結乃。
「何よ、ベイスターズファンは基本的にネガティブが多いのよ!」
「胸を張って言うことかなぁ・・・・」
勝っていてもどうせ逆転されるだろう、そのうち連敗するだろう、そういうブレーキというかストッパーを常にかけているというものだ。
「最悪のことを予測したリスクマネジメントよ! これ大事!」
「嬉しくないなぁ」
とはいえ、リスクが顕在化した時に心構えがあるのとないのとでは、受ける精神的ダメージが異なる。
「でもまだ諦めたわけじゃないからね! ただ、ここから巻き返すには連勝が必要よ!」
「そのためにもまず一つ、勝ちたいね!」
「そんな状況で先発を任されたのが井納! ・・・・井納、かぁ」
「なんでそこで肩を落とすの!?」
「だってファームでもあまり結果を出していなかったのでしょう? それがカープに通じるかしら?」
「苦しい時、井納投手はよく頑張ってくれていたじゃない!」
そうだ。
こういうときこそ空気を読まずにやってほしい。
「相手は大瀬良、今シーズンは結構、打っているのよね。でも、難しい相手であることにかわりはないわ」
「とにかく、先発投手が試合を作って欲しいよね、QSお願いします!」
そう、まずはきっちりとした試合をしてほしい。
投手陣がしっかりしないと、今後の勝ち星だって伸びていかないだろう。
「マジで踏ん張りどころだかんね! まだまだBクラスだって近いんだから!」
連敗で阪神と4.5ゲーム差。
首位とは4ゲーム差。
「でも、面白い展開じゃない! かろうじてCS争いをしていたチームが、首位が臨める位置にいるんだから!」
「そうだよね、その位置にいないと、この辛さ、苦しさ、もどかしさは味わえないんだから!」
「一丸となって戦うのよ!」
宮崎は厳しいだろうが、光は練習で投げ始めたとも聞くし、パットンもCSに間に合いたいと動いている。
誰もまだ、諦めてなんかいない。
「諦めたらシーズン終了だわこんちくしょう!」
「まだまだ、ここからだと思って応援しよう」
「でも、勝祭かぁ・・・・確か勝率悪くなかった?」
「だからぁ、そういうこと言わないでよー」
本当に勝祭になるよう頑張ろう!