「櫻井ーー!」
結乃の叫びが響き渡る。
「そ、そこまで大きな声で言わなくても」
理衣が手で耳を塞ぎながら言う。
3月18日のロッテとの練習試合。
先発した櫻井はまたも2回2失点と結果を出せなかった。
「これだけチャンスをもらっているのにね、やっぱりまだ下で経験を積んだ方が良いんじゃない?」
「期待されているんだろうね」
「期待は良いけれど、結果が出ていないじゃない。ラミレスが頑固にこだわっているように見えるわよね」
もともとラミレスは自分が信じていることを曲げずに続けるタイプだ。
果たしてそれが良い方向に向かえば良いのだが。
「その後に投げた伊勢、砂田も失点したみたいね。まあ、それだけで判断は出来ないけれど」
「早い回から継投になったから、誰かは打たれちゃう可能性が高いよね」
「幸い、その後に投げた一軍クラスの中継ぎは失点しなかったみたいだから良いけれどね」
武藤、パットン、笠井、国吉といったところである。
あ、進藤も無失点だったらしい。
「打線は柴田選手がホームラン! 打撃で結果を出しているよね」
「本人も課題だってのは分かっているし、良いわよね」
「これでレギュラーにも近づいたね!」
「相手が二冠王のソトというのがね。攻撃力を取るとなると、ソトは外せないしね」
悩ましいが、高いレベルで悩ませてくれるなら嬉しい。
「ただ、攻撃はその2点のみ! 寂しいわよ!」
「毎試合、打てるわけじゃないからね」
「あと、他に誰が打ったかとか詳細の結果、知らないからね!」
練習試合なので仕方ない。
「なかなかネタがない中、エスコバーが順調に回復しているみたいね」
「良かった、開幕に間に合うかも!?」
「まー、でもじっくり直してくれればいいわよ。幸い、他の外国人選手が好調だし、完璧に直してくれた方が良いしね」
「無理してあわせて、すぐに悪化して離脱、とか最悪だもんね」
「エスキーがいなくても大丈夫! と思わせてほしいわね!」