「DeNAになってデータを活用するようになったのは良いわよね!」
と、選手データを見ながら結乃が言う。
「昔とは全然、違うよね」
理衣も画面上に表示されているデータを眺めながら言う。
が、そのデータとは、選手の身長や体重、趣味などだ。
「ただのミーハーじゃない!」
「えー、いいじゃない、楽しいじゃない、こういうデータ!」
「まあ、それは否定しないけれど、そういうことじゃなくて!」
選手名鑑などを見ていると、思わぬ発見などがあって楽しいのは確かだが。
<ベイスターズをのぞいてみよう!>データ野球を支えるIT革命の実態。
「なんか毎年、新たな機器を導入している感じだよね」
「選手の技術というか、もっているものを数値化してくれるのはわかりやすいわよね」
投手であれば回転数であったり回転軸であったり。
打者であればスイングスピードであったり。バットの軌道であったり。
今の時代、なんでも数値化できるわけである。
「ただ、数値が全てじゃないってのが難しいところよね」
「どの数値が良いとか、そういうのも分からなさそうだよね」
「理想の数値じゃなくても打てる、抑えられるってのもあるでしょうしね」
「それに、データを取得、分析しているのは、野球の専門の人じゃないわけだしね」
人によっては、野球も知らない素人に言われたくない、という人もいるだろう。
だからこそ、コーチの理解が重要だというのはその通りだろう。
数値、データを使って教えるのはコーチなのだから。
「コーチの中では大家が凄いみたいね!」
「やっぱりメジャー経験が大きいのかな?」
「本人の資質っぽいけれど、それでも投手が育ってきているのは、大家の力は大きいのでしょうね」
そうして、大家がコーチとして新人時代から育てていけば、最初から数値やデータに馴染みやすいのも頷ける。
若手は、なお受け入れやすいだろう。
「とはいえ、数字に振り回されるだけじゃ駄目よ、いかにうまく活用するか、だからね!」
「データはあくまで手段であって、データを使うことが目的じゃないからね」
「そう、なんのためにデータを使用するかよ! でも、昔はそんなことも考えなかったし、そもそもデータどころか計画もなく、引き継がれることもなく、ただ漫然とやっていただけだったからね」
「継続されるってのが大きいよね!」
人が変わっても、引き継がれていく資産として、ずっと大事にしてほしいものである。