「GWに突入したらしいわよ!?」
結乃が疑問符を付けて言う。
「本来なら待望の長期休みだけどね」
理衣もなんとなく言葉のキレが悪い。
「そうじゃなくて、今週は一日しか休みがないのにGWなの!?」
「そこはほら、自粛も踏まえて最大12連休にしたらどうかという政府のお達しが・・・・」
「そう簡単にはいかんのじゃい!」
「誰の言葉よ・・・・」
「ということで、こういう時はスカッとする想い出を!」
「それはいいね!」
「ブレット・ハーパー!」
■横浜ベイスターズ (2010 - 2011)
■通算 591打数 168安打 打率.284
(NPB通算)
「ハーパーといえばアレしかないわよね!」
「そう、アレ!」
「時は遡ること2010年7月18日・・・・」
「語り出しちゃった」
「相手は巨人! 場所は横浜スタジアム!」
「倒すべき相手!」
「6月時点で首位巨人とは18.5ゲーム差の最下位!」
「あう・・・・」
早々にシーズンを脱落していた弱さを発揮していた時代。
「9回裏、4-7で最後の攻撃、先頭打者は捕手の橋本将!」
「おお・・・・いたねぇ・・・・」
「橋本が正捕手の時代よ・・・・」
「落ち込まないで!」
「マウンドには、横浜から巨人に行ったクルーン! 契約社会で仕方ないけれど、悔しいわ!」
「巨人さんの財力には敵わないもんね・・・・」
「そのクルーンから橋本がライト前ヒット!」
「甘い球を逃がさずに強振!」
「次打者、チーム最年長の佐伯は凡打になるも、内川がストレートの四球!」
「盛り上がってきます!」
「そしてやってきました石川雄洋! この時点で打率なんと.300!」
「さすが!」
「雄洋も四球を選んでついに満塁に!」
「きました!」
「大盛り上がりのスタジアム! 何せ相手が首位の巨人、マウンドには強奪されたクルーン! これで盛り上がらないはずがない!」
「想像できるね!」
「ここでこの日4打数3安打のハーパー! 打率は5割近く!」
「期待が出来るね!」
「そしてクルーンが投じた初球を一振り!」
「おおっ!!」
「ファンの大歓声にのった打球は大きな弧を描き、ベイスターズファンの待つライトスタンドに突き刺さったーーー!!!」
「きゃーーーーっ!!!」
拳を突き上げる結乃と理衣。
「熱狂の渦! 狂騒のライトスタンドと一塁側! 立ち上がり、ハイタッチをかわすファン!」
「そりゃそうだーっ!!」
「3点差からおかわりなしの逆転満塁サヨナラホームラン! これは盛り上がらないわけがない!」
「うーん、最高!」
「しかも日曜だったからね、気分よく翌日から一週間を始められるわよね!」
「本当だね!」
「ただまあ、その日からチームは5連敗するんだけどね」
「なんでーーー!?」
劇的なサヨナラ勝ちで勢いがつきそうなのに、逆に連敗に入り込む。
それが、当時のベイスターズというチームだったのだ。
シーズン途中入団だったハーパーはその年、期待に応える数字を残してくれた。
が、研究されたのか翌年は活躍できず解雇となった。
「それでもハーパーは強烈な印象を残してくれたわ!」
「それもこれも、この試合だね!」
ありがとうハーパー!
あの試合は、暗黒時代にあってもっとも明るい試合の一つであった。