「いよいよ６月よ！ 開幕まで３週間足らず！」
月がかわり、結乃がまたテンションを一段とあげてきた。
「うーん、そういう気分になるよね！」
理衣もグッと拳を握りしめて気合が入っている。
「そんな気合を入れたいときにぴったりなのはこの人よ！」
■横浜ベイスターズ (2000 - 2010)
■通算 ３５勝 ２５敗 ２４セーブ ８８ホールド
最優秀中継ぎ投手（２００１年）
「みんな大好き、木塚敦志よ！」
「木塚コーチ！」
結乃も理衣も嬉しそうに跳ねている。
「なんといっても炎の穴掘り！ 気合の塊！」
「気合と気迫を前面に押し出すスタイルは人気も出るよね！」
「ジャンプ、股割り、そして掘る、掘る、掘る！」
「ピンチを抑えた後も格好良いよね！」
とにかく気迫で抑える。
１９９９年のドラフトで２０００年から出場と、チームの下降線をその身で知る男。
それでも、どんな状況でも気迫で相手チームに、打者に向かっていった。
誰よりも練習し、泣き言を言わず、若手も何も関係なく先頭に立ってきた男。
だからこそ皆から慕われ、どん底にあったチームに炎を灯し、引退試合には多くの仲間達が来てくれたのだ。
「救援一筋、４９０試合すべて救援登板は、今でもセ・リーグの連続救援登板数の記録らしいわよ」
「まさにスペシャリストだね！」
「もう本当に感謝しかなわね」
結乃が頷きながら言う。
「でも、やっぱり投げ過ぎで怪我しちゃったね」
「本人は何一つ泣き言なんか言わなかったけれどね」
それでもやはり故障の影響は大きかったのか、まだ３３歳という年で引退。
「球団からの信頼も厚く、その後もずっとチームに残ってくれているのは嬉しいわね！」
「投手コーチとして木塚コーチがブルペンにいてくれると安心だよね」
「何せ救援のスペシャリストだからね！ 選手にも気合を注入してほしいわ！」
選手からも、ファンからも愛されている男、木塚敦志。
あの、沈み込むようなサイドからのキレのある直球は本当に忘れない。
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