「契約更改が続々と進んでいくわね」
結乃が物知り顔で言う。
「コロナのこともあってどうなるかと思ったけれど、意外と順調だね」
理衣も安堵したような表情で言う。
チームの順位もBクラスとなり、厳しい更改も想定された。
しかしふたを開けてみれば、思いのほかそうでもない。
「国吉とか柴田がアップは当然としても、上茶谷が現状維持、神里も乙坂も武藤もアップだもんね」
「ちゃんと働きを見て評価してくれているってことだよね」
「数字だけを評価しているわけじゃない、ってのは良いところよね」
「なんか、嶺井選手だけダウンしちゃった感じ・・・・」
「まあ、出場試合が少なかったしねぇ」
頑張れ、にぃにぃ。
「そして大和は現状維持は置いといて、どこでもやるぜ宣言!」
「大和選手が内野にいてくれると安心するからね」
「大和にとっては試合に出場できることが一番であるのと同時に、どこでも俺は誰よりも守れるぜ! っていう自信なんでしょうね」
「チームにとっては有難いよね」
セカンド、ショート、そしてセンターと、センターラインを高い守備力で守れるユーティリティというのは大きい。
「さらに打撃も向上しているからね、まだ老け込む年齢じゃないしね」
「完全に横浜の選手としての位置を確立しているよね」
「ファン人気も高いし、本当に来てくれてよかったわ!」
「大和選手の振り返りはまた別のところで!」
「でも、こうして評価されると、選手は頑張ろう、って気になるんじゃないかしら」
「そうだよね、正当に評価されると思ってもらえると嬉しいね!」
「とはいえ、親会社の収益にも左右されるから、なんとか頑張ってもらわないとね」
「昨今の状況だとね」
「ということで、2021年のファンクラブは、スペシャルコースにしたわよ! あたしも球団の収益に寄与!」
「こういう積み重ねが大事だよね!」
個人に出来ることは僅かかもしれない。
それでも、やらなければゼロのまま。
出来ることを、少しずつ。