「さー、きたわよ、我らの平田!」
結乃がテンション高めにジャンプしながら言う。
「良かったよね、平田選手!」
理衣も嬉しそうに拍手している。
#34 平田 真吾
登板試合 : 43
投球回数 : 44 1/3
防御率 :2.84
勝利 : 1
敗北 : 1
セーブ : 0
ホールド : 11
奪三振 : 46
「なんといってもプロ初勝利をついにあげたからね!」
「史上3番目だっけ、初勝利までの登板数の多さ」
「100登板以上で勝利していないってのがね、これ、勝利せずに戦力外だったら、それまた記録だったけどね」
「そんな記録は嫌だね」
とにかく、毎年のように首筋が寒いといわれながら生き残り、ついに初勝利をあげたのだ。
しかも、先発登板で。
「中継ぎでも勝利しそうな時はあったんだけどね、その試合に限って三嶋が追いつかれるという」
「広島戦だったね」
「どこまでも勝てない、そういう巡り合わせなのかと思っちゃったけれどね」
「ちゃんと神様は努力を見てくれていたんだね」
「神様じゃない、平田本人の力がで掴んだのよ!」
選手の中には、敗戦処理扱いで投げたら直後に味方打線が大爆発してあっさり初勝利する選手もいる。
勝ちに不思議の勝ちあり。
投手の勝ち負けは自分でコントロールできないものだが、ここまで苦戦するとは平田本人も思わなかっただろう。
「なんといってもルーキーイヤーの巨人戦がね」
「ああ・・・・」
「5点差が5点差に! の衝撃があったから、ファンが平田を見る目もね」
あの試合から何をしてもうまくいかなかった。
ビハインドで好投を積み重ねて信頼を得ても、勝ち場面で登板した途端に痛打を浴びる。
そんなことを繰り返して。
ファンが平田を見る目も必然的に「そう」なってしまっていた。
「それでも本人は努力し続け、20年はキャリアハイ! 不安定なときもあったけれど、良い数字を残したわね!」
「本当におめでとうございます!」
「これは70点はつけられるわね」
「高評価!」
とはいえ、まだまだ絶対的な信頼感があるわけではない。
継続していけるかどうか、そこが重要だ。
「でも、平田も苦しい思いをして来ただけに、21年以降もやってくれると思っているわよ!」
「楽しみだよね」
「先発でも良い気がするんだけど、まあそれはチーム事情次第ということで」
「どちらにしても与えられた場で全力で投げるだけ、だね」
覚醒が遅いということはない。
苦しい中継ぎの台所事情を助けて、フル回転してくれ。