「かつての首位打者、楠本ね!」
遠い目をした結乃が言う。
「オープン戦の、だよね」
苦笑しながら理衣が言う。
期待もされている楠本。
だが、現実はなかなかに厳しい。
#37 楠本 泰史
出場試合 : 28
打数 : 29
打率 :.154
安打数 : 4
HR : 1
打点 : 1
盗塁 : 0
「うーん、結果が出ないわね」
「代打がメインだと、やっぱり厳しいのかなぁ」
「それはあるでしょうけれど、でも代打で結果を出さないとその先がないわよ! 守備や走塁ではなく打撃で獲得した選手なんだから!」
「ドラフトも下位だったし、佐野選手みたいな位置づけかな?」
「とゆうことで、点数的には30点かしらね」
「厳しいね!」
打撃能力がないはずはない。
オープン戦で首位打者を獲得したのだから。
だが、一軍では壁に跳ね返されているのが現実である。
「外野で空いているのがセンターだからね、となると楠本は厳しいわよね」
「ライトかレフトだもんね」
「守備固めで入るほど守備が上手いわけじゃないし、だから打撃での結果よ!」
「まずは確実性、だよね」
長打を放つタイプでもないので、打率、そして二塁打を放てるか、だろうか。
「代打は手薄で2020年も苦しんでいたからね、そこは付け入る隙があるはずよ」
「チャンスを掴んだときに結果を出せるか、だね」
「絶対に、一軍に呼ばれる機会はあるはずよ。二軍でちゃんと結果を出せばね」
「そこはきっちり数字を残しているんだよね」
二軍では結果を出している。
でも、一軍にくると跳ね返される。
そういう典型的な選手になってしまっている。
「2021年、そこを乗り越えられるかどうか!」
「一軍であの、打席に向かうまでの一連の動きを何度も見たい!」
「そういうマニアックな所は置いておいて、どんな形でも結果を出したいわね」
「頑張れ!」