「いやー、やっと1つ勝って、とりあえず安堵ね」
穏やかな表情で結乃が言う。
「さすがに一つも勝っていないと、全然違った気持ちになっていたよね」
理衣も笑みを浮かべている。
「とはいえ1勝6敗の借金5、最下位の現実は変わらないからね!」
「ここから巻き返していかないとね!」
「エスキーも来日したし、4月中はなんとか耐えて、ね」
「辛抱、辛抱! でも若手にはそれまでチャンス!」
「さて、で開幕して連敗続きだったわけだけど、これまでの三浦の采配をちょっと考えてみたわ」
「新監督だもんね」
「基本的にはオーソドックスな采配よね」
「奇をてらったのは感じなかったよね」
「ただ、オーソドックスな采配はチーム力の差が出やすいと思うからね」
「とはいえ、奇策は長丁場では通じないよね」
短期決戦ならまだしも、長いシーズンであれば自分の考える戦い方を貫いた方が良いだろう。
たとえ苦しんだとしても。
まあ、明らかに間違っていたなら直して欲しいが。
「別に間違っているとは思わんのよね。石田だって2回連続失敗して3回目を試すって変なことじゃないし」
「初戦はリードされての登板だったし、そもそも昨年の実績もあるしね」
「康晃の回途中登板も、康晃、石田、三嶋を勝ちパターンと考えるなら、序列的に出すのは当然といえば当然」
「開幕して数試合だしね」
「先発を引っ張るのだって、そういう方針ってこと」
「先発投手を育てないとね!」
「攻撃の采配もまあ、分からなくはないし」
「バントもよく使っているね」
「結果が出ているかは別として。足を使った攻撃はなかなか出来ていないけれど」
「そう簡単にできるもんじゃないよね」
「もちろん、ちょいちょい、『え?』と思う所もないわけじゃないけどね」
「全員が納得の采配なんてないだろうし、あとは結果論の部分もあるよね」
「ランナー無しの代打で細川、チャンスの代打で戸柱とかは、そこかー? って思うけれど」
「あはは」
「結果が出ていないことは言われても仕方ないけれど、滅茶苦茶な意味不明采配とかではないと思うわ」
「あとは結果が出れば!」
「まー、それが難しいんでしょうけれど」
何事も勉強。
だが、見てて悲観するような、悲劇的な采配ではないと思える。
「これから次第に色が出て来たら面白いわよね」
「あとは選手がそれに応えられるか」
「そこよねー。選手が応えらえれない采配ってことは、選手を把握できていないとも捉えられるからね」
「でも、この辺も難しいよね。出来ると思って、実際にできるはずでも、必ずうまくいくわけじゃないし」
「それでもやるしかないのよ!」
まずは1つ勝って緊張とプレッシャーも軽くなっただろう。
選手も含め、これからまだまだ見せ所!