「なんと、28日は東が先発!」
結乃が大きな声をあげる。
「実に767日ぶりだって! おめでとうございます、東投手!」
理衣が拍手する。
明るい話題。
「しかしその登板が、チームが6連敗中、相手は8連勝中で直前の試合で16得点と中日投手陣を粉砕したヤクルトが相手なんてね!」
「なかなかきっつい登板になっちゃったね」
「二軍では抑えたといっても、一軍はレベルが違うからねぇ」
「それでも、投げてくれるだけでもうれしいね!」
お試し登板ではない。
二軍でイニング数、球数を増やし、数字的にも内容的にも問題ないと判断したからこその登板である。
それでも、状況的には大変だろう。
「今永だって、一軍にあがってからはいまいちな投球が続いていたからね」
「高い期待をしすぎずに、まずはきっちり投げてくれることをね」
「いや、一軍に上がった以上は戦力として投げてくれないと困るけれど、とはいっても、というところよね」
「うーん、むつかしところ!」
ファンからすれば救世主を望みたい気持ちもあるが、シーズン終盤でCSも絶望的な今。
どちらかといえば残りの数試合の登板で、来季に向けて状態をあげてもらえればというところである。
「もちろん、好投してくれたら言うことなしだけどね!」
「勝利投手になってヒーローインタビュー!」
「まあそれは完投、完封でもしないと無理でしょうけどね!」
「また酷い自虐だね」
「だってあの中継ぎ・抑え陣だし! さらに相手は奥川! どう勝てって?」
「う、うーん」
とまあ、不安なことばかりだが。
それでも東が一軍で先発できるということは、希望であることに間違いはないから!