2021年振り返り #4 強力なライバルに負けるな! 伊藤 裕季也
「厳しい状況になったわね、裕季也は」
結乃が腕を組んで言う。
「頑張ってほしいんだけど!」
拳を握りしめて理衣が言う。
#4 伊藤 裕季也
出場試合 : 3
打数 : 2
打率 :.000
安打数 : 0
HR : 0
打点 : 0
盗塁 : 0
「とにかく寂しい数字が並んでいるわ」
「わずか2打席だもんね」
「なんといっても、ルーキーの牧に競争で負けたから仕方ないっちゃあ仕方ないんだけど」
「うーん」
打撃型の内野手として獲得し期待した裕季也。
守備なら大和、柴田、倉本、といったところに敵わない。
そうなると打撃でアピールが必要だったのは本人もわかっていたはず。
キャンプ、オープン戦と起用されたが、そこで牧に勝てなかった。
それが全てであろう。
「牧があれだけの活躍をしちゃうとねぇ」
「よほど打たないと、だよね」
「ファームでも本塁打こそ10本打ったけれど、打率は.229だしね。二軍なら無双するくらいじゃないと」
「厳しい数字が並ぶねぇ・・・」
1年目の後半の出場で期待をさせてくれた伊藤。
しかし2年目は思うような結果が残せず、3年目の今季は完全に牧に奪われてしまった。
「裕季也はとにかく打撃を向上させるしかないわよ、長所をいかに出すかね」
「3塁には宮崎選手、1塁にもソト選手がいるから大変だよね」
「でも、今季のソトの成績じゃレギュラー固定なんていかないし、牧だって2年目にどうなるかまだわからないからね!」
「プロだし、競争に勝ち抜くしかないよね・・・」
3年目の21年が正念場といったが、22年は完全に背水の陣だろう。
レギュラー定着とまでいかなくとも、1軍にいてもよい、と思わせる爪痕を残さないと立場は危機的なものになってくるかもしれない。
「まずは右の代打として定着を目指すところよね」
「守備も1,2,3塁と、どこでも守れるというところをアピールしてね」
「とにかく打てるということを見せないと! ということで今季は5点よ! 0点にしないのは武士の情けか・・・」
「見返してほしい!」
キャンプなどでも居残り練習しているのを見ていた。
だけど、プロの世界は結果を残してこそ全て。
牧という強大なライバルがいるが、年下でも良いところは素直に吸収して自分のものにするくらいにしてほしい。
タイプは違うかもしれないが、同じ右打ち、強打を期待される内野手なのだから。
「秋季練習でレベルアップして、キャンプ、オープン戦でなんとか!」
「応援しています!」
がむしゃらに頑張れ、裕季也!