「野球がつまらない!」
結乃が叫ぶ。
「まあ、なかなか勝てないしねぇ」
理衣が慰めるように言う。
「そういうことじゃなくて、勝っても負けてもつまらない! なんでこんな思いしなきゃなのかしら」
といことで、昨今の横浜の野球は観ていてつまらないと感じてしまう。
観たいと思わせてくれるところが少ない。
「土日の横浜でも座席はガラガラなのが示しているじゃない。日曜は2万ちょっとだっけ?」
「ううぅ、確かに」
「昔は負けていても観客は増えていったけれど、今はどんどん減っていくわね」
「なんでだろうね」
「そこを、あたしの考えで言ってみるわ!」
■中畑監督時代:どん底から這い上がる「熱」と「諦めない野球」
「中畑時代はわかりやすく、そもそもそれまでが焼野原状態で、選手もファンも心が死んでいた状態だったからね」
「実際の中身は知らないけれど、そういわれているよね」
「そういう状態から中畑監督が熱を注入し、少しずつ選手に自覚を持たせ、「最後まで諦めない」野球を浸透させていったのよね」
「7点差の大逆転が年に3回とかあったもんね」
「毎試合全力じゃあ長いシーズン走り切れないけれど、それでもそういう試合、姿勢がファンの心をとらえていったのは事実よね」
「酷い負けも多かったけれど、劇的な勝利もあったもんね」
そこには、球団のサポートの変化もあった。
「補充」だったTBS時代と違い、「補強」したDeNA。
ブランコ、ソーサ、ソトの3枚獲り、モーガンやグリエルといったメジャー級外国人選手の獲得。
そして、筒香や梶谷の台頭で、打線の方はハマれば爆発するモノを見せていた。
「横浜が球場だから、打てる野手を出して派手に勝つ。まあ、そういうのが分かりやすくウケたのもあるけれどね」
「盛り上がったよね」
中畑監督時代は最下位、5位、5位、最下位、と成績自体はあがらなかったが、チームとしての成長は感じられた。
まあ、最終年は流石に少しちょっと・・・と思えるところが増えたが、それでも楽しませてくれた。
何より、この時代は未来に希望が見えたのが大きかった。
■ラミレス監督時代:成長した選手とデータをもとにした、適材適所の野球で「勝ち」を知っていく
「ラミレス時代もわかりやすく、なんといっても球団初のCS出場に日本シリーズ出場!」
「あのCSは盛り上がったね! 東京ドーム第3戦!」
「中畑時代に成長してきた選手たちをもとに、ラミレスは徹底的にデータを駆使し、「相手の嫌がる野球」をやったわ」
「それが功を奏して勝ちを伸ばしたね」
「もちろん、戦力的にまだまだ十分といえなかったけれど、常にAクラス争いをさせるに至ったわ」
「ファンとして初の体験だったね」
育てたりするタイプではないが、一軍監督なのだから選手をどうすれば最も有効に起用し勝ちにつなげられるか。
そこに拘る采配を見せた。
「あとはまあ、本人に確固たる信念というか、采配に対する自信を持っていたわね」
「外からみるとよくわからないことでも、ラミレス監督の内には、そうするべき必然性があったんだよね」
「それが相手からして、良くわからなくて不気味と思わせるものがあった」
「外国人選手の起用方法も上手だったよね」
「コミュニケーションが取れるし、ラミレス自身が打撃が優秀でアドバイスもできるしね」
更にドラフト戦略が功を奏し始め、山崎、今永、濱口、東といったドラフト上位の即戦力投手が力を出し。
宮崎が開花し、筒香、ロペスと強力なクリーンナップを組んだ。
「最終年はなかなか厳しかったけれど、それでも4位だしね」
「5年間も指揮をとってくれたもんね」
勝つことの楽しさを教えてくれたのがラミレスであり、ただ勝つだけではなく派手な勝ちも多かった。
何かやってくれるのではないか、そう思わせてくれるのがラミレス野球だった。
まあ、ハマらないときはあっさり負けるし、ラミレスもそこは割り切っていたけれどね。
■三浦監督時代:???
「さー、そして今の三浦時代よ。まだ途中なので、どういう野球かの結論は出さないけれど、観ていて面白いと感じられないのが辛い!」
「なんでだろうね?」
「中畑、ラミレスと、強烈な監督が続いた後ってのはあるけれど、どんな野球がしたいか分からないのよね」
「機動力を使って1点を取りに行く野球・・・とか?」
「そう簡単にできるものじゃないから、今できていないのはある程度仕方ないのかもしれないけれど・・・どっちつかずよね」
出来ないにしても、そういう野球を目指してトライ&エラーを繰り返すわけでは無し。
かといってかつてのように火力が凄まじいわけでもないので、打つだけでは勝てず。
投手陣は伸び悩み。
「あとはねー、これはもう性格的なものだから仕方ないかもしれんけど、熱を感じられない!」
「そういうのは目に見えるものではないから辛いね」
「それでも、選手は指揮官の、上司の姿を見て、働くものなのよ。どの組織でも。中畑は明確な熱が本人にあった。ラミレスはデータと信念があった。それに比べると、分かりづらいわよね」
「うーん」
もちろん、中畑監督、ラミレス監督のやり方に合わない選手もいただろうし、全員がそれでやる気全開になったとは言わない。
ただ、今よりは、選手たちの熱も大きかったのではないかと、見えてしまうというか。
試合を見ても、淡々と負けているようにしか見えない。
先制されると負ける。終盤に大逆転とか見たことない。
「そういうのが観ているファンにも伝わっているんじゃないかしら」
「それでも勝てていれば違うんだろうけどね」
「そりゃそうよ。勝っていればある意味正解なわけで、勝てば見に行く。負けていても面白ければ見に行く。両方ないからね」
「厳しい!」
巷間でも言われているが、三浦への評価がどんどん落ちている。結果が出ていないので仕方ないのかもしれないが。
人としての三浦を嫌いにはならないし、選手時代の三浦を嫌いになることもないしむしろ感謝している。
しかし、このままでは指導者としての三浦はもう見たくない、そう思わせられてしまいそうなのが辛い。
「采配とかもオーソドックスな感じで、こういうことしたいんだろうなー、というのは分かるんだけど、それが悉くハマらないという」
「なんでだろうねぇ」
「采配に応えられない選手ともいえるし、選手が応えられるような采配をしていないともいえるわね。負けてるし」
「負けに不思議の負けなし、か」
「まーシーズンまだ途中だし、その辺のことはいったん置いておいて。とりあえず直近で言えば明らかに状態の悪いソトと楠本は二軍調整! 細川と石川あげたら? 好調な選手は起用! 支配下登録だって1軍で投げさせるためでしょうに!」
「細川選手は二軍で絶好調だもんね。石川選手も支配下登録されたし」
「どうせ皆打てていないんだし、一塁佐野で、外野はしばらく蛯名固定、他を大田、細川あたり使ってみてほしいわ」
「足も使えて大きいのも狙えるもんね」
「まー、細川は一軍あがったらまた繰り返しになるかもしれんけど、桑原も神里も上がり目ないし、いいでしょ」
「うーん、酷い言いよう・・・」
「ショートは打てなくても森固定で。広島戦での、蛯名と森への代打は目を疑ったわ」
「打てなくても、打席に立たせてこそ得られるものがあるってね」
「宮崎も得点圏打率がねぇ。今打点17よ!?シーズン通して打点40の5番打者とか!」
「・・・・」
「ただ、他に3塁守れるのがいないし上げてもらわないと困るわ。あと二人で中継ぎ投手を増やすとかした方が良いのでは」
「切り込むねぇ」
「中継ぎが死ぬから中継ぎローテで。伊勢、エスコバー、健二朗が登板数1、2、4位だからね」
「上位独占だ」
「先発が仕事していないせいだけど、それで中継ぎ潰したらストロングポイントが消えるわよ」
「故障したらどうにもならないもんね」
「あと入江とクリスキーは回跨ぎさせすぎ。まあ、これも先発のせいなんだけど」
「みんな厳しい!」
そんな感じでどうでしょう。
負け続けても、若手を我慢して起用し続けるならいいですよ!
いや、負けるのは嫌だけど、希望が見えない負けが辛いんですよ!
当たり前だけど応援したいのです。
応援したくなる野球を、お願いします!