「ああもう、今でも悔しいっ!」
結乃が地団太を踏む。
「この悔しさは来季まで忘れないね」
理衣も歯噛みしている。
CSが終わり、2022年シーズンが終了した。
「ということで、2022年シーズンをテーマごとに簡単に振り返ってみるわよ」
「毎年恒例ですね」
「といっても、あくまで素人が素人目線でこう思ったってだけなんで、別に批判とかじゃないからね!」
「先手をうって釘を刺してきた・・・」
ま、世の中いろいろありますから。
「まずは終わったばかりのCSよ!」
「結果は1勝2敗で敗退でした。残念」
「なんといっても3得点、5失点という、得点力の低さ! 火力の弱さ!」
「シーズン終盤からの打線の低調が続いたままだったね」
「相手が阪神投手陣相手とは言え、これじゃ勝てないわよ!」
「しかもそのうち1点は相手の暴投だからね」
「あとは、短期決戦としての采配が中途半端に感じたわ。この辺は経験の差かもしれないけれど・・・」
「というと?」
「初戦、青柳対策で宮崎とソトを外したけれど、桑原、牧、嶺井は残したのよね」
「左が3人に右が6人並ぶ打線だね」
「守備を考慮したのでしょうけれど、相性を考えて牧はともかく桑原は関根に、嶺井は戸柱にして左を8人並べるくらい思い切った方が良かったんじゃないかとのね」
「右打者で一息付けちゃう、と」
「青柳を打っている牧は別として、桑原と嶺井は落ち着けるでしょ。他の左だって打力が高いわけでもないしね」
「難しいところだね」
この辺は勝てていないので結果で判断されてしまうが、中途半端な左打者作戦になってしまった。
「そして何より問題の3戦目! まあ、ケースバッティングとかできないのが問題ではあったんだけど・・・」
「併殺が3本、だね」
「この試合のポイントと思ったのはは4つ。
1、3回裏に1点を取ってなお1死1、3塁、牧が交代した浜地の初球を打ってゲッツーで終了
2、4回表に佐藤にホームランを打たれたこと
3、濱口を6回続投させたこと
4、9回裏攻撃全般
ね」
「多いね」
「1と2はセットね。牧、あれはいかんわ。後の2打席でヒットとかいらないから、ここで外野フライでも打っていれば全然違ったのに」
「本人も悔しいだろうけれどね」
「流れが完全に止まったところ、4回表を0で抑えればまだしも、2人を抑えた後に佐藤にHRを打たれて相手に流れがいったわ」
「あれも、完全に振り切ってホームランって感じじゃなかったんだけどね」
「パワーのある選手だとああいうのがあって、それをあの場面で打たれるのが駄目よね」
「ここからどんどん相手に流れがいったね」
「そして濱口の交代時期。5回まで1失点だけど80球以上投げていて、しかもボール先行でランナーも出して守備時間が長くて」
「頑張っていたんだけどね」
「球数以上に疲れていたはずだし、6回は2番からの上位打線。攻撃の流れ的に追加点取れなさそうだし、2-1で勝つしかないと思わないと」
「残り4イニング、入江投手、エスコバー投手、伊勢投手、山崎投手、と」
「もちろん誰か打たれるかもだけど、今季2位になれたのは間違いなく中継ぎ陣のお陰なんだから、かけても良かったしそれで駄目ならまだ納得もいったのにね」
「この辺も難しい起用だね」
伊勢が連投していた。
延長を見据えていた。
そういうのもあるのかもしれないが、濱口続投はレギュラーシーズン通りの采配にも見えた。
2戦目の大貫みたいに抜群の内容なら続投も当然と思えるが。
「そして9回裏! ここは色々あるわよね」
「うーん、怖い」
「まず、牧が出塁した時点でなぜすぐに代走の森を送らなかったのか」
「ソト選手が出塁してから2枚代えだったね」
「1点取らないといけないんだから、代走を送って宮崎バントじゃなかったのか? 宮崎にそのまま打たせて三振と、ここの意図が分からない」
「宮崎選手はこの試合1安打1四球、アウトになった打球もセンターへの良い当たりだったし、打たせる方に判断したのかな?」
「そうかもだけど、宮崎はゲッツーの可能性も高いし、2戦目に送りバントさせたのになぜここで送らせなかったのか。何より代走よね」
2塁に行ったら代走を送るつもりだったのか、だがそれなら最初から代走を送った方が良い。
森ならば、牧を交代しても森ショート、大和セカンドができたし、大和を交代したなら柴田でも藤田でもいたわけで。
「結果的にソトが四球で助かったけれど、ここの代走で2塁に神里、1塁に森と、ここもどうなのってね。ベースランニング速いの森でしょ」
「神里選手の足でも2塁から帰ってこれる、長打が出た時に1塁から一気に帰ってこられる森選手を、ってことかな」
「まあ、森が2塁でもオースティンのライナーのあたりでどなったか分からないけど、経験の少なさと思い切りが結果論で良い方に出たかもだしね」
「もう、難しい事ばかり!」
「そして極めつけが代打、藤田。外野フライが欲しい、内野ゴロが嫌なところで外野に飛ばせない藤田とか」
「色々と判断したんだろうけれど」
「そもそも大勢のストレートに全くついていけず三球三振するような40のベテランが、湯浅のストレートを弾き返せると思ったのか」
「でも初球のストレートをきっちり打ったよね」
「そこはまあさすがなんだけど、ただそこまで強い打球でもなかった気がする」
「大田選手の代打成功率の低さを指摘している人もいるね」
「まあそうなんだけど、藤田だってそんな言うほど打席多くないしねぇ。何よりあの状況で誰を出すかよね」
残っていたのは、
大田
藤田
柴田
嶺井
嶺井は捕手なので起用できない。
柴田はこういう場面ではガチガチになって打てる気がしない。
こうなると大田と藤田の二択になるのは当然。
「あとは外野手が大田だけなのに対し、内野が藤田、柴田の二人のこっていたことね。楠本に代打桑原を送るから」
「色々と因果がありますねぇ」
「大田は足の状態が悪くなかったとかいう情報もあるけれど、2戦目ではスタメンで出ていたしね」
「ベンチがそういう判断をして、結果としては最悪になっちゃっただけ、と見るしかないんだよね」
「わかっているんだけど、なんで大田が先じゃなかったのかというのは絶対に思っちゃうのよ!」
「見ている方は何とでも言えるけれど、難しいよね」
「ただこの3戦目は特に、短期決戦の采配をした阪神と、そうでない横浜の差が出たように思えたわ」
「結果がどうなっていたかは分からないけれど、ってことだよね」
大田が打ったとは限らない。
三振の可能性は大田の方が高いだろうし、併殺打のリスクだって低くはない。
それでもこの2022年シーズントータルで考えたら、大田の方が結果を出していたし、阪神戦サヨナラといえば大田だったわけで。
「とまあ、負けたからこそ色々と言いたいわけだけど、勝っていても9回裏のことは突っ込んでいたわよ」
「本当に悔しいね!」
勝てば官軍負ければ賊軍。
まあ、負けても賊軍というわけではないけれど、指揮官が叩かれるのは仕方ない所か。
ただそれでも、やれることをやったのか? というのはある。
現場としてはもちろんそうなのだろうけれど、外から見た素人目線だとそうも思えるわけで。
「悔しさは来季に晴らすしかないけれど、課題ばっかりね!」
「その辺はまた違う時に!」
キリがないので、この辺で。