「これはびっくりしたわね」
結乃が目を丸くする。
「まさかだったね」
理衣も驚きを隠せない。
確かに戦力外通告は日本シリーズ終了の翌日までだが、まさかそこで追加があるとは。
「まだ高卒3年目よね。あれ、浅田と同じ?」
「若いのに、現役引退も決断したんだって」
「うーん、まだまだこれからだけど、チームも本人も難しいと判断したのね」
「ううう、悲しいね」
手薄な内野の強化として、森とともに指名された田部。
森とはタイプの違う、長身の大型内野手として獲得したのだが、芽吹くことはなく現役終了となる。
「その後もドラフトでは小深田、粟飯原を獲得し、更に今年は林を獲得して、そこで比較判断なのかしらね」
「まあ、はやいうちに次の道へ、ってのはあるかもだけどね」
「数年後の内野陣を考えた時、牧に加えて森、小深田、粟飯原、林、というところを考えているってことなのかな」
「あとは支配下枠をあけるため、か」
これで8人が戦力外、ドラフトで支配下枠が5人。
空いているのは4つ、ということになる。
「康晃のポスティングや外国人選手の契約とかまだ不透明だけど、まあ、そういう事情もあるでしょうね」
「うーん、でも悲しいね」
「今季は二軍でも打撃成績は向上したようにみえたんだけどね」
「それで一軍でも初出場を果たしんだけどね」
その頃は内野手の不足などあったかもしれないが、チャンスではあった。
ドラフト下位だけに、少ないチャンスでものにできていればという思いはあるが、高卒3年目。
「考えられるのは、FA市場か、康晃や外国人選手が残留の方向なのか、とかね」
「それでも内野手は不足しそうだけどね」
「期中トレードも含めてマイナス4になって、プラスがドラフトで2人? 確かにね」
「誰か、目途がついたとかなのかな?」
あるいはニュースでもあった蛯名の三塁挑戦とかも含めてか。
「とにかく、こんなギリギリでは珍しいわよね。誰かも言っているけれど、育成切り替えの交渉不調とかもありえるわよね」
「事実は分からないけれど、決まったことはもう変わらないから、あとは田部選手の次の道を応援するのみです」
「そうね、3年間のプロ生活を糧に頑張って欲しいわ」
決断したなら、もうそれを応援するしかない。
頑張れ、田部。