2018年5月31日(木) vs 楽天イーグルス
結果:横浜4-3楽天
敢闘選手賞:山下、筒香
「泣くわーー!!」
TVKの試合中継を見ていた結乃が言う。
言葉だけかと思いきや、振り返った結乃の大きな瞳から透明な滴が零れ落ちているのを見て、さすがの理衣も驚いた。
「そ、そんなに?」
「だって見た? ムシキング、ずっと泣いていたよ!」
画面を指さして力説する結乃。
結乃の言う通り、サヨナラヒットを打ってから選手の皆にもみくちゃにされ、「勇者の遺伝子」が歌われて、ヒーローインタビューになってもずっと泣いていた山下。
色々と込み上げてくるものがあっただろうことは容易に理解できる。
「去年、一軍にあがって試合に出てはエラーをしたり、打撃でも結果でなくて、叩かれていたりもしたしね」
途中出場などの数少ない出場機会、守備固めなどで出たはずがエラーをしたり、本人も苦しかっただろう。
ならば打撃はと思っても、一軍の投手相手ではなかなか結果も出ない。
2018年も二軍スタート。
焦りも、不安も、恐怖もあっただろう。
「だから、結果が出てよがっだわよね」
ぐしぐしと、理衣のシャツの裾で鼻を啜る結乃。
「そ、そっか、それでもめげずに努力を続けて頑張って、それが報われたんだね。良かったね」
理衣もつられて、うるりとくる。
この試合は恐らく全ベイが泣いたことだろう。
「その山下が打てたのも、9回裏2死走者なしから筒香が同点ホームランを打ったからこそよね!」
「あれは凄かったね。ここで打ってくれー、とファンの誰もが思ったところで打ってくれるんだもん」
「楽天のエース、岸の完投勝利を防ぎ、敗戦を崖っぷちからすくいあげたからね!」
これぞ4番。4月からなかなか調子の上がってこなかった筒香だが、この5月途中から随分とあげてきた。
「そしてプーさんの一撃。ロペスがまだ出られないだけに、二人に頑張ってもらわないとね!」
岸の失投を一撃で仕留めた宮崎もさすがであった。
「他にも、守備で助けてくれた神里選手、サヨナラのお膳立てをした桑原選手とか、皆頑張ったね」
「そうね、今日は全員でつかみ取った勝利かもね。康晃も、冷や冷やしたけれど抑えたし」
「東投手も、打球を足に当てながら8回途中まで頑張って投げたし」
「今年初のサヨナラゲーム、うん、よかったわ!」
ようやく涙も止まり、赤くなった目で笑う結乃。
「これで2連勝スタート、だけど喜んでばかりいられないわ。次はソフトバンク戦だしね!」
「相手は千賀投手、横浜は・・・・今永投手だって!」
「それなら2017年に勝っているわ! 貰ったわね!」
「あ、サヨナラ勝ちしたからか根拠ないポジティブさ」
だが、勢いをもって福岡に乗り込みたい。
そして、今永で勝つことが出来ればチームとしてもかなり乗っていけそうである。
何せ交流戦で無類の強さを誇るソフトバンク、今年も阪神に3連勝スタートである。
「ロペスの負傷、ソトの当たりが止まって不安も多いけれど、勝ち越すわよ!」
「今年こそ福岡で勝ち星をあげたいね!」
「・・・・ちなみに、このサヨナラ勝ちで真っ先に山下に駆け寄ったのがウィーランドってのがなんか嬉しいわ!」
2017年もサヨナラゲームで倉本に駆け寄っていたウィーランド。チームのことを自分のことのように喜んでくれる助っ人が好きだ!