■打ち手がなくなってきたベイスターズのこの先
ホーム6連戦で1勝5敗。
最下位転落。
壊滅している先発ローテーション。
失敗続きの守護神。
明るい話題も少なく(むしろ無いか?)、浮上のきっかけも見当たらないベイスターズ。
それでもペナントレースはまだ2カ月近く残っている。
優勝はともかく、2位以下はいまだ借金を抱えた団子状態であることに変わりはない。
一つでも上位を目指し、CS出場権を目指すベイスターズのこの先を考えてみる。
「まあ、あまり考えようもないんだけどね」
「いきなりそれ?」
冒頭から力の抜けるような発言をする結乃に対し、さすがに理衣も拍子抜けしてずっこけそうになる。
「もともと、スモールベースボールを掲げていたのよね。それも当然、打つだけで勝てるわけないもの。それはDeNAになってから、中畑時代から目指していたこと」
「だけど今は攻撃的打線になっているね」
「それ以外に選択肢がなくなっちゃったからね。倉本も柴田もバントは上手くないし、2番として繋ぎも出来ない、足も速くない。桑原は考えるようなシチュエーションでは力を発揮できない」
「小技の出来る人は、石川選手とか、田中選手あたり?」
「そう。でも、彼らはレギュラーというより控えで周囲を補うタイプだしね。雄洋に守備力があれば、一番ハマりやすいけど」
いずれにしても、スモールベースボールをできるような人材がいないのは確かだ。
「でも、神里選手とか宮本選手みたいに、足を使える選手は増えたけれど」
「とはいえ、打撃技術はまだまだ。粘ることが出来るわけでもないし、いやらしいバッティングができるわけでもない」
「状況に応じた打撃というやつも、だね」
「もっと粘れ、四球でもいいから出ろというけれど、そこまでの選球眼もない。追い込まれてファウルで粘れる技術があるわけでもない。必然的に、追い込まれる前に甘い球を打てってなるんでしょうけれど、それを仕留められる打撃技術もない」
「ないない尽くしだね・・・・」
がっくりと項垂れる理衣。
「数年前から意識して、『凡事徹底』を掲げてやってきたはずなのにね。結局みんな、大味野球の得意な人ばっかりなのよね」
「でもシーズン序盤はうまく出来ていなかった?」
「連勝していたあの一時期でしょ。でも、神里とか宮本とか、すぐに通用しなくなったでしょ」
盗塁も決まらなくなり、打撃の方でも壁にぶつかった。
先日の広島戦の延長、倉本に送りバントを指示しなかったのは、倉本にバントは無理だと判断したからではなかろうか。
「状況に応じて進塁打、右打ち、引っ張り、そんな打撃できないんだから、『打て』しかない。そりゃ、点が取れる時は取れるけれど・・・な野球にしかならないわよね」
「でも、それしかない?」
「まあ、2番石川という手をとるのもあるけどね。ラミレス監督はそれよりもストロングポイントを押して、打てる人を上位から並べるしかないって決断したんじゃない?」
今の打線であれば1-5番までで点を取る野球。
だから、そのうち2人くらい打撃状態が悪いとあまり点が取れなくなるのは必然。
「間に倉本とか柴田とか、技術の無い、あるいは打撃に期待できない選手を下手に置いて断絶するよりは、打てる可能性の高い選手を並べて、ってことでしょうね」
「そうなると重要なのは・・・・」
「まー、この打線だからってわけじゃないけれど、先発が試合を作るしかないでしょうね。それも出来ていないから、こうして敗戦を重ねているんでしょうけど」
1点を積み重ね、効率よく点を取って逃げ切るような試合はもう出来ない。(少なくとも今のメンバーでは)
攻撃的布陣でどこかで点を取る。それまで先発が試合を壊さない。
選手が采配に応えられない以上、あとは選手が力を発揮してくれるのを待つしかない、ということだ。
「ただ、その先発陣が壊滅状態だからねぇ」
今永、石田、濱口、井納、ウィーランド、誰も期待通りに投げられていない。
濱口、ウィーランドは復調傾向も見られるし、良い投球の登板もあるのでまだ期待はできるが。
「何か良い材料はないの?」
さすがに上を向くことが出来るような何かが欲しい。訴えるような目をして結乃を見る理衣。
「ここまできてもラミレスがぶれずに前向き発言していることかしら? チーム内がどういう状況になっているか分からないけれど、指揮官が下を向いて発言もぶれぶれで後ろ向きだったりしたら、選手もやる気を失っていくはずだからね」
少なくともラミレスはまだ諦めていない姿を見せている。
その姿勢は変えていない。
「世の中にはもう諦めちゃったファンとか、文句ばかり言うファンも多いけど、あたしは応援し続けるわよ!」
「でも、文句は言うんでしょ?」
「そりゃそうよ、1ファンだもん。まあ、文句ではなく批判したいとは思うけれどね、ぶっちゃけ、誰か相手がいるわけでなく一人で言っているだけだしね」
「一応、公共のWEBに出ているけどね」
「文句の一つも言わないとやってられないからいいのよ!」
文句を言わせないような試合やプレイを見せてくれれば良いのだが。
「それにね、文句すらいう気力が起きなかったようなTBS時代を見てきたから、今のチーム状況でも絶望なんかしない。むしろ、チームや選手がちゃんと課題を理解して将来に向けて考えて行動してくれるなら、応援する気だっていくらでも湧き上がってくるってもんよ!」
「さすが、暗黒時代を生き延びてきただけのことはある!」
「暗黒時代よりずっと前からよ!」
「いや、結乃は生まれていない設定だからね・・・・?」
「とにかく、多分ラミレス的にはもう策は残っていないと思うのよね。となると、あとは選手の個の力を信じて起用し、前向きな発言をするだけしか出来ない気がするわ」
「うーん、辛いね」
「ただまあ、伝統的に自由にやるしか出来ない球団だからね。だからハマった時だけは強いけれど、強い時期は続かないんだろうし。それでも、そんなチームが好きなんだからしょうがないじゃない!」
ある意味、それも魅力なのか。
緻密な野球、スモールベースボール、身の丈に合わない野球をやってもうまくいかない。
もちろん先を狙う走塁などは必要だが、選手にのびのび自由にやらせていく。
選手の意識と技術が揃えば、それでも強くなれる。
今はその途中過程と思いたい。
「色々あるけれど、あたしは最後まで見届けて応援するわ! みんなもついてきてね!」
「・・・・誰に言っているの?」