戦力外通告③ 外からやってきたいぶし銀 田中浩康
暗黒時代の影響を受け、経験のあるベテランが不在の横浜。
特に内野陣ではリーダー的な役割を果たしてきた山崎憲晴が不在となり、不安も大きかった。
そんな状況の中、球団が取った選択が、ヤクルトを戦力外となった田中浩康の獲得だった。
「2年間という短い期間だったけれど、浩康さんもなくてはならない選手だったよね!」
理衣が肩を落としつつもなんとか笑顔を見せるという器用なことをしてみせる。
「そうね、ピロはヤクルト時代にラミレスとも一緒にやっていたし、考えとか理解しやすいのはあったかもだしね」
「2017年のCS勝ち抜き後のビールかけで、『I☆YOKOHAMA!』って言ってくれたのは嬉しかったなー」
「戦力外から入った年でビールかけだもんね。優勝ではなかったとはいえ。楽しそうにしていてくれて良かったわよね」
決して目立つ存在ではない。
縁の下の力持ち。
そういう立ち位置を理解し、活動してくれていたと思う。
「さすがにね、守備の方は昔と比べてかなり衰えている感じは否めなかったけれど」
「でも、きっとそれ以上のものがあったと思うんだよね」
「打撃は・・・・まあ、最初からそこまで期待していないというか、犠打とか右打ちをちゃんとしてくれればね」
「打席で、あのバットを振る仕種を真似したよね、結乃は」
独特のバット揺らしは、なんとなく記憶に残ってしまう。
「一番びっくりしたのは、交流戦のvs西武でまさかあの菊池雄星からホームランを打ったこと!」
「しかも打った瞬間の、完璧な当たりだったよね」
「あれはびっくりしたわー。いや、ファン全員がびっくりしたでしょう!」
何せ相手は菊池雄星、苦戦は必至の試合だったから。
浩康の2ランで先制、その後に追いつかれてヒーローにはなり損ねたが、あの試合で勝てたのも浩康のHRがあってこそ。
「今後はどうするんだろうね?」
「さすがにこれから他の球団が獲得するとは思えないからね。コーチ候補として球団職員で残るのか?」
「残ってくれたら嬉しいよね!」
「そうね、とにかくベイスターズといえば人材難はどこでおあるからね!」
強気でどんな球も しぶとく打ち返せ
さぁ行こう横浜で 輝けよ浩康