戦力外通告⑦ ラミレス監督の期待は高かったが 網谷 圭将
ラミレス監督から絶賛されていた、右の大砲候補だった男。
キャンプでも一軍に抜擢され、ホームランなどもかっとばしていたりした。
網谷がモノになれば、強打のキャッチャー誕生か!?
そう、期待させてくれていたのだが。
「アーミーが戦力外は意外だったわね」
と、結乃も首を捻っている。
「てゆうか、アーミーって・・・・」
理衣が苦笑している。
「アミちゃん?」
「呼び方はいいから」
「育成契約をもう一度、ってことはないの?」
「この時期に戦力外通告ってことは、ないでしょう」
「まだ若いのに、早くない?」
「とはいっても、育成ドラフトからもう3年? 何かしら駄目だと見切りをつけたんでしょうから」
打撃の力を活かすため、捕手だけでなく内野にも挑戦していた。
途中からは内野手登録となり、内野手一本でやっていくと思っていたのだが。
「パワーは間違いなくあったし、惹きつけるものはあったと思うんだけど」
「二軍での育成がうまくいっていないとか・・・」
「そ、それは禁句よ理衣ちゃん!」
ファームの野手が育っているように見えないのは、ここ数年で懸念である。
何せファームの打撃コーチが、打撃で実績のないような二人なのだから。
コーチとして有能ならば異論はないが。
「田代さんがいてくれれば、大砲候補を育てるのは実績あるし、もしかしたら違ったかもしれないけどねぇ」
「網谷選手といえば、キャンプで最後までノックを受けていたのが印象的だったねぇ」
「あぁ、ミスしたら1本目からやり直しのやつね。先に大河があっさりと20本終えていたのよね」
「確か、『網谷さん、まだやっているんですか?』みたいなこと言っていたね」
「網谷も吠えながらやっていて、ファンも温かく見守っていたわね」
懐かしき想い出。
だが、少なくともベイスターズで花開くことはなかった。
「まだ21歳、いくらでもこれから伸びる可能性はある。本人も野球をやめるつもりはないようだし、頑張って欲しいわね」
「そうだね、いずれ、ベイスターズを見返すくらいになってくれるといいね」
未完の大器。
やがて本当の大器になるかもしれない。
その時、ベイスターズに戦力外にしたことを後悔させるくらいに成長してくれることを願う。