戦力外通告⑨ 育成の殻を破れず 亀井 塔生
3年で1軍にあがり1億円プレーヤーに。
そう抱負を語っていた若者がユニフォームを脱ぐ。
「亀井選手も戦力外かぁ・・・・」
「そんなこと言って理衣ちゃん、知っているの?」
「し、知っているよ! 捕手でしょ!」
「それくらいしか知らないでしょう」
「じゃ、じゃあ結乃は知っているの!?」
「あたしも同じ程度よ!」
胸を張って言い張る結乃。
ただでさえ育成契約であり、目立つような存在ではない。
加えて本人も物静かな性格のようであり、キャンプなどでもさほど目立たない。
それ故、話題にあがることも殆どなかった。
「強肩を武器にプロ入りしたけれど、それだけじゃあやっぱり生き残れないのよね」
「確かに、二軍の打撃成績もあんまりだしね・・・・」
「好青年だったけれど、残念ね」
「まだ若いけれど、もう野球をやめるんだって。残念だね」
「若いからこそ、新しいことにチャレンジするのも良いんじゃない? なんでもできるわよ!」
「なんか無責任な感じが・・・・」
「仕方ないじゃない、あたし達にできることなんて、応援するだけなんだから!」
そう、野球の試合にしても、辞めていく選手達に対しても、ファンが出来るのは応援することだけなのだ。
「育成だったとはいえ、プロ野球の世界にいたことは事実なんだから、それを今後の糧にして欲しいわよね!」
「……これで、戦力外通告となった全9選手を振り返ったね」
「でも、うち3人が育成契約。加賀と後藤をいれても支配下があくのは8人。ドラフトやそれ以外のことを考えると、あと少しは枠を空けそうな気がするのよね」
「不吉な事言わないでよ・・・・」
「仕方ない、事実なんだから! 実際、よくまだ生き残っているよなぁ、って選手もいるし・・・・」
果たして第二次戦力外通告はあるのか。
また、外国人の契約はどうなるのか。
オフシーズンはこれからが本格、まだまだ目が離せない!