2019年新戦力 #67 戻ってきた努力の左腕 古村 徹
「古村投手って、前に横浜にいたんだよね?」
首を傾げながら言う理衣。
「そうよ。桑原なんかと同期のドラフト入団よ。あの、高校生ばかりドラフトの年ね」
懐かしむように頷きながら言う結乃。
一軍に立つこともなく育成契約になり、その後は選手ではなく打撃投手として球団と契約。
もはや選手として戻ることはないだろうと思われたが、まさかの再契約である。
「凄いね!」
「凄いわよ。150キロを投げるようになって横浜に戻って来たのよ」
「努力したんだろうねぇ」
「簡単に口で言えるほどのことではないでしょうね」
怪我で投げられず、その後も苦戦したという。
フォームを変えたり試行錯誤の末に辿り着いた、プロ野球選手としての契約。
「一度はプロを去ることになる選手にも、希望を与えるわよね」
「そうだね、こうして戻って来られる、っていうことが証明されたもんね!」
一軍で投げる姿こそ見たことが無かったが、球団ファンとしては応援したくなる人生の変転である。
「でも、ここで終わりじゃないわよ。むしろ、ここからが始まりだからね」
「確かに、まずは一軍のマウンドで投げないとね」
「そこで活躍してこそ、自分を首にした球団に対して上から目線で見られるってもんよね!」
「その言い方はどうかと思うけれど・・・・」
だが、そういうことだろう。
古村はそのように思っていなくても良い。
是非、首にした球団に目に物みせてやってほしい。
「狙うポジションは左の中継ぎ、ってことだよね」
「砂田、エスコバー、タナケン、中後・・・・あたりがライバルかしらね」
「エスコバー投手が外国人枠があるから、そういう部分でチャンスがあるかもね」
「砂田、エスコバーの二人に続く中継ぎ左腕が弱いから、そこを補えると嬉しいわね」
中継ぎはただでさえ疲れやすいし、長年活躍するのも難しい。
是非、埋めて欲しいポジションである。
「まだ投げているのを見たこと無いから分からないけれど、ただ速いだけじゃ今の球界、通用しないからね」
「あとは変化球、どういう球を投げられるのかね」
「制球ももちろん。でも、球団が獲得したってことは、いけると思ったんでしょ」
「うーん、楽しみだよね!」
こむらがえり。
是非、この言葉を定着させてほしい。
おかえり、古村!