「ヤバい状況ね!」
元気よく結乃が言う。
「そんな、明るくいうことじゃあないような気が」
理衣が困ったように言う。
「暗くなっていたって良い方向に向かわないでしょう! 今のベイスターズのベンチのように!」
「ま、まあ、それは」
笑えない理衣であった。
「成績はまあ、5月上旬だし、絶対に挽回できないというわけではない」
「そ、そうだよね!」
「問題は、チームが崩壊していないかってことよね。バラバラになっていたら、今シーズンで復旧するのは難しいでしょうね」
「そ、そんなこと言わないでほしいなぁ」
「いやぁ、一度崩壊したチームを治すのって大変よ。仕事のプロジェクトでもねぇ」
うんうんと頷きながら言う結乃。
「そういうときって、要はマネージャーやリーダーがもうメンバーの信用を失っているのよね。マネージャーやリーダーは必死にどうにかしようとしても、有効な手が打てないというか、メンバーがそれを有効だと思えないというか」
「なんで仕事を知っているような口ぶりで・・・・」
偉そうに語る結乃を見つめながら言う理衣。
「そうなると、あとはもう外から火消しのために新たなマネージャやリーダを持ってくるしかないのよね」
「でもそれって」
「そう、あくまでその場を解決するための短期的な形。長期的にどうするかはまた別に考えないといけない」
「ちょ、ちょっと結乃」
慌てて結乃を止めようとする理衣。
「勘違いしないで、別にあたしは現首脳陣を変えるべきとか言いたいわけじゃないわ。どういう状況か分からないからね、部外者のあたしでは」
皆が一つになってもがいているならば、何かが変われば浮上する可能性はある。
ただ、そうでない場合は苦しい。
「まー結局、重要なのは勝つことよね。中がぐだぐだでも、10連勝すれば雰囲気も変わるし」
「そうなると良いけどねぇ」
「ただ、東がまだ駄目となると、先発投手が今永以外全滅状態だからね。次に良いのがルーキーの大貫じゃあ」
濱口がいつ戻ってくるのか。
平良がいつ投げられるのか。ただ、東があれでは、平良も怪我明けで過度な期待は出来ないかもしれない。
「何か、明るい話題が欲しいわね。こういうとき、ベンチのムードを明るくできる高城がいないのも痛いわよね」
とにかく、全てが悪い方向に向かっているように思えてしまうのは、負けているから仕方ないところであるが。
「あたしが望むのはまず一つ。応援しがいのある試合をして欲しいわ!」
観戦に来ているファンを、テレビやネットで応援しているファンに呆れられる試合をしないよう頼みます。
・・・・ねえ?