「さあ、ここからは次の巨人との直接対決前の重要な６連戦よ！」
結乃が宣言する。
「うぅ、緊張するね」
理衣が手を組んで祈っている。
「そういうときは、これを読むのよ！」
「前の週、５勝１敗として２ゲーム差を縮めて４ゲーム差。この６連戦でも最低４勝２敗、出来れば５勝１敗でいきたいわね」
「高いハードルだよねぇ」
「巨人が中日、ヤクルトとの連戦だからね。普通にやれば４勝２敗、悪くても３勝３敗ではいくと考えないとね」
「そうなると、やっぱり４勝はしておきたいよねぇ」
「しかしこちらも相手が苦手阪神、そしてナゴドの中日と、やりやすい相手じゃないからね」
「特に阪神戦は････うぅ」
理衣が嫌なものでも思い出したのか、苦い表情を見せる。
「さらにベイスターズは先発も苦しいからね」
「濱口投手が抹消で、東投手も阪神戦で上がって来られるのかまだ分からないもんね」
上茶谷、井納、東、平良、大貫、今永
「あたしの予想よ！ ま、東次第だけど」
「これ、東投手が戻ってこられなかったら、本当にどうなるのかな？」
「京山をもう一回、かしらね。まだ抹消していないし」
「頑張ってほしいね、みんな！」
残り４週、１週で１ゲーム差ずつ詰めて、ようやく追いつくが、できればその前に追いついておきたい。
ベイスターズの強みは、追いかける立場で失うものがないこと。
もう既に死力を出して試合に臨んでいること。
「あ、でも、今永の間隔を開けて、１０日からの巨人戦にぶつけるかも」
「そしたら中日戦は？」
「それこそ京山含めた総出での戦いでしょ。あるいは石田を先発させるか。ギャンブルだけど、それくらいしないと、巨人には追いつけないでしょうからね････巨人も次の３連戦では菅野、山口の２枚をぶち当ててきそうだし」
「た、確かに、そうかも」
「で、中４日で１５日の中日戦。中５日で２１日の巨人戦といく可能性も。だから、この試合で球数多く投げてもらったのもあるかもよ」
追いつく前に力尽きるか。
ジャイアンツが鞭を入れてスパートかけて突き放してくるか。
ゾンビのようにしぶとくしがみついていくか。
果たして、どうなるか。
「巨人とすれば、自分たちが勝てばよいとはいえ、不気味に感じてくれたら良いのだけれど」
「気にしてくれれば余計な力が入るかも、とかだね」
「今の巨人はしばらく優勝から離れ、経験のある選手も少なく････はないけれど、ほら、ねえ！？」
「いや、そう言われても････」
「この６連戦、キツイわよ。相手も青柳、柳、大野と、難敵がズラリ。ロメロがいないのは良かったけれど」
「それでも、戦っていかないとね」
「打線が期待できないから、やっぱり投手頼みになっちゃうわよね。ここが崩れたらお終いよ」
「あと１カ月を切りました！ もうひと踏ん張りを････」
「良い方に考えれば、西、岩貞、高橋と、阪神の打てなさそうな先発は出てこないと！」
「そう考えると中日戦の方が厳しそうだね」
「雨天中止で中日のローテが狂ったのが誤算だったわ！」
今でも踏ん張っている選手達には厳しいかもしれないが、そうとしか言いようがない。
「とにかく一戦必勝は変わらないからね。まずは阪神戦の初戦を死に物狂いで勝ちにいくこと！ カード頭とれば３タテはないし、勝ち越しの可能性も大きくなるわ！」
「先発は上茶谷投手、ルーキーには重荷だけど」
「得難い経験でもあるわよ！」
とうとう始まる、勝負の９月。
選手はもちろん、ファンも９８年の優勝を経験していない人は初めて迎える、優勝争いの輪に参加しての９月だ。
きっと今までのどの９月よりも濃くて熱い一か月。
存分に苦しみ、喜び、嘆き、楽しもう。
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