「毎年の寂しくなる恒例の戦力外通告よ!」
結乃がびしっと言う。
「そんな、元気よく言うものじゃあ」
理衣がたしなめようとするが。
「しめっぽくなっても仕方ないわ。今までの感謝の意をこめて、元気よく次の一歩に向けて送りだすのよ!」
「ていうか、戦力外通告の話は昨日の記事でも・・・・」
「何いっているの、今回からよ!」
まあ、そういうことにしておきまして。
「それにしても、大河は想定外だったわね!」
「まだ高卒3年目でしょ? どうしてだろう」
ファンの多くが首を捻ったであろう、松尾大河への戦力外通告。
「高卒ながらドラフト3位、5年後、10年後の正遊撃手と期待していたのにね」
「U23の代表にも選ばれて、国際大会で活躍もしていたよね」
「それでも戦力外、しかもこの若さってことは、伸びが見込めなかったってことなのかしらね」
「厳しいね」
守備は並み以上のものがあったと、素人目ながら思えた。
ということは、打撃であろうか。
「もうちょっと、成長を見て見てもよいと思うんだけど、枠を空けないとというのもあるし、難しいとこよね」
「内野手も、決して豊富ってわけじゃあないものね」
一軍を見れば、大和、柴田といったところが一軍には定着しているが、それ以外で二遊間があまり見当たらないのも事実。
そんな状況でも契約しないということは、新たに強化したいということではないだろうか。
「倉本、山下、飛遊馬、みんなイマイチ上にあがれないけれど、彼らよりも目がないとの判断ってことよね」
「コメントに困るね・・・・」
投手はドラフトで確実に強くなってきている。
外野手も、ドラフト下位からの選手が成長してきて争いが激しくなっている。
内野手だけが、次世代がなかなか見えてこない。
もちろん、打てて守れて走れる内野手など、そう簡単に出てくるわけもないが。
「一軍でみることも出来なかったわね。残念だけど、決まったことにあたし達が何かできるわけでもないし」
「トライアウト、受けるかな?」
「まだ野球を諦める気はないみたいだしね。実績はないけれど、若さと可能性でどこかの球団に入れると良いけれど」
そうして、力を伸ばしてやがて活躍し、ベイスターズに目にものみせてくれるほど成長してくれると、悔しくも嬉しいのだが。
まだ21歳、これからなんでもできる。
頑張れ、松尾大河!