「青柳は育たなかったわね」
重い声で結乃が言う。
「一軍にも上がれなかったね」
理衣もしゅんとしている。
横浜には珍しい、大阪桐蔭からの指名。
というか大阪桐蔭から高卒で入団したのは青柳が初めてだったらしい。
身体能力、将来のクリーンナップ候補として獲得したが、残念ながら二軍でも成績を残せなかった。
「本当にね、右打ちの外野手がなかなか育ってくれないのよね」
「育成は難しいね」
「大阪桐蔭といえば強打! 中村 剛也、中田 翔、浅村 栄斗)、森 友哉などなど」
「本当にそうそうたるメンバーだね」
「指名順位は高くなかったとはいえ、強打者をめざしての獲得だったことに間違いはないわよね」
「素質を評価していたんだよね」
本来はじっくりと育てる方針であったが、だからといっていつまでも待てるわけではない。
「せめて、二軍である程度の成績を残してくれていればまだ残す目があったと思うけれど」
「二軍でも数字があがらなかったもんね」
「高卒で4年、早いと言えば早い見切りだけど」
「大卒1年目とカウントしてくれないかな?」
「まあ、大学4年やっても駄目だったと判断されたってことでしょ」
身体能力、飛ばす力はあると評価されていた。
しかし、それも活かすことが出来なければ意味がない。
残念ながら本人はそれを活かしきれず、ベイスターズも力を伸ばすことが出来なかったということだったのだ。
「これで引退するみたいね」
「まだ若いから、違う道でもこれから色々できるよね!」
「プロで生活した4年間を、良かったものにしてほしいわね」
大阪桐蔭からの強打者は大成ならなかったが、今後の糧になってくれれば。
「これに懲りず、また大阪桐蔭で良い選手がいれば挑戦したいわね!」
「ベイスターズに大阪桐蔭って、あまりイメージないもんね」
「なんでかしらね?」