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【ベイスターズ小説】青き星たちの反撃 2.なぜ、このチームを

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 それは、2010年か2011年くらいのことだったろうか。
 苦い思い出が神門巡にはあった。いや、その年に限ってではないが。あれは何かの飲み会の場であった。

 飲み会などの場で、『野球の話』は厳禁だという。

 なぜなら各チームのファンは自分が推しているチームのことを褒め、対戦チーム、ましてやそれが嫌いなチームであれば下手すれば選手を揶揄することを口にしてしまうかもしれない。言われた方は良い気がしないし、当然のように言い返す。良いところもあれば悪いところもあるのが普通のことで、突っ込みどころは必ずあるのだから言い合いになる。いい年をした大人であれば理性をもって話をするが、酒が入れば何を言いだすか分からない。
 それでも、他人の口から出る話を自分の意思だけで止めることはできない。

「やっぱり今は中日が最強でしょう。強すぎて逆につまらないくらいですよね」
「何を言っているんだ、巨人の今年の戦力を知らないのか。もう優勝間違いないだろう」
 昔と比べれば地上波放送が減り人気も落ちてきたと言われるが、それでも根強い人気を誇っていることに違いはないし、球団名くらい知っている人はまだまだ多い。男性で、年代が上になっていけば比率は高くなり、好きな人間が近くにいると分かれば会話が始まるのは必然であった。

 そんな風に盛り上がり始めた時でも、巡は自らその話の輪に入っていくことが出来ないでいた。早いところ話題が変わってくれないかと内心で思う。この場には野球に興味のない若い者も、野球など殆ど知らない女性だっているのだから。
 そう思う時に限って、なぜか話題が続いてしまうものであり、しかも順にとって望まない方向に、である。
「そういえば神門さんもどこかのチームのファンでしたよね。えーと」
「神門は横浜だよ」
 巡のことを知っている先輩であり上司が先に答えてしまう。
「ああ……横浜ですか。今年は去年より良さそうじゃないですか? ほら、えーと、外人がいいですよね、横浜」
 球団名を聞いた後輩社員は、なぜか今まで他の球団に対して文句を付けていたのから一転、良いところ探しでもするかのようなことを言いだす。さほど詳しいわけでもないが、イメージか何かで言ってきているのだ。
 助っ人外国人が優良だったのは昔の話で、今は殆どたいした活躍をすることもなく退団していっていることを知らないのだろう。

 こうして、他球団のファンからさえも気を遣われるようになったのはいつ頃からだろうか。互いに相手の球団にケチをつけあい、弱いところ痛いところを突かれるのは悔しかったけれど、同情されるのは悔しさを通り越して情けなかった。
「それでも厳しいだろうなあ」
 以前は厳しく突っ込んできていた上司ですら、少し気を遣うような言葉になっている。
「いや、それにしても横浜は弱いですよね。どうして神門さんはファンなんですか」
 当たり前のようにこのような質問をぶつけてくる者がいる。
 どうして弱いチームのファンになるのか、応援し続けるのか。弱いチームを応援していて面白いのか。もっと勝てるチーム、強いチームを見ていた方が楽しくはないか。そんな疑問を持つ者がいる。
 そういった人間の考えが分からないわけではない。負けるより勝った方が楽しいし嬉しいのは当たり前だ。
 だけど、分かる気がするだけで、心の底からは理解できない。

 

『負けるチームを、弱いチームを応援するのが好きなわけじゃない。好きになったチームが、ファンになったチームが弱いだけなんだ!』

 

 そう叫びたい心の内。
 だけど現実には。
「いや、子供の頃にファンになって、もうずっとだからね」
 と、笑いを浮かべながら答える。
 熱くなるのは恥ずかしい、飲み会の場で本気の言葉を口にしたところで引かれるだけだと思い、いつも通りの答えを言うだけにとどめる。
「ああ、地元でしたもんね。そうそう、子供の頃といえば俺――」
 幸いにして話題が別の方向にずれてくれた。
 野球好きの仲間内でならともかく、老若男女雑多な人間の集まる職場の飲み会で熱く語ったところで仕方がない。
 温くなったビールを喉に流し入れながら、何度となく考えてきたことを思い出す。

 自分はなんで、このチームのファンになったのかを。

その3につづく

 

■バックナンバー
1.歴史と共に、今

 

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