「櫻井が物凄く期待されているわよね」
開幕(?)まで一か月、暇になった結乃が首を傾げながら言った。
「沢山、登板のチャンスが与えられていたもんね」
理衣も頷く。
高校時代、清宮から5打数5三振を奪うなどして注目を浴びた。
確かに良いところを色々見せてくれている。
それにしても、他の同世代の投手の中でもかなり優遇してチャンスを与えられている。
「うーん、なるほど。目先の欲にとらわれちゃったのかしら?」
「まあ、ローテのチャンスとか言われたら、まずは結果を出さなくちゃあって思うよね」
「だから、思い切りの良さが消えたのかしらん?」
確かにオープン戦などでは、やたら四球が多かった。
それも、抑えなきゃいけないと思い、変にコースを狙いすぎてしまったのか。
「櫻井くらいなら、まだガンガン思い切っていってほしいわよね」
「打たれても、それを糧にしてくれれば良いもんね」
「とはいえ、結果を出したいと思うのは当然だけどね。誰だって、失敗したくないし」
「でも、こういう苦しみを経験するのは良いことかもね!」
「それを乗り越えられればね」
もともと、ドラフト5位である。
すぐに抜群の結果を残して欲しい立場というわけでもない。
失敗を糧にして、試行錯誤して、そこから一回り大きくなってほしいものである。
「特にセリーグはDHがないからね! 打撃の良い櫻井が先発なら、打撃でも貢献できそうだからね」
「大きなアドバンテージになりうるかもだよね」
そのためにはまず、投手としての実力を身に付ける。
今の苦しみを、どうプラスに変えていくか。
それを求められてもいるのである。
「ポテンシャルは間違いないはずだから! 頑張れ!」
「期待を力に変えて!」
2020年、開幕されれば一軍で投げる機会は間違いなくくるだろう。
その日に向けて、日々精進!