「神奈川も各施設に休業要請だって!」
ニュースを見た結乃が言う。
「仕方ないよね」
理衣は頷くしかない。
「マジかー! だったら図書館でもっと本借りておけばよかった! 一か月分!」
「いつもと同じ感覚で借りちゃっていたもんね」
「予測は出来たのに・・・・自分の甘さが恨めしいわ!」
「でもほら、積読がたくさんあるじゃない」
ということで、本を読みましょう。
「それはそれとして、今回は流れを重視よ!」
「豊さん、博一さんときたら・・・・」
「そう、鉄道大好きおじさんよ!」
「屋鋪さんだね・・・・」
まあ、何も間違ってはいないが。
■横浜大洋ホエールズ 横浜大洋ホエールズ
横浜ベイスターズ (1978 - 1993) ■通算 4263打数 1146安打 打率.269
■盗塁王 1986-1988年 ■ゴールデングラブ 1984-1988年
「スーパーカートリオのトリは、三年連続盗塁王、5年連続ゴールデングラブの屋鋪要!」
「こうして聞くと凄いね!」
「だけど今や鉄道大好きおじさん!」
「それはいいから・・・・」
だが実際に、プロ野球選手だったことを知らず、鉄道文化人だと思っている人も多いのではなかろうか。
「なんといっても足よね! トリオの中でもやっぱり屋鋪が一番よね」
「タイトルがそれを物語っているよね」
「足と守備には絶対の自信を持っていたものね。これで打撃が良ければ本当に文句なしだったのに!」
「打撃は良くなかったの?」
素朴な疑問を呈する理衣。
「まー、良くはなかったわね。結構三振しやすいイメージがあるのと、あまり四球を得られないタイプだったわ」
「なるほどー」
「タイプ的に1番だけど、スーパーカートリオで3番だったのは、そういうのも大きいでしょうね」
細かいことが出来ないタイプだったと思う。
確か、バントも下手くそだった記憶である。
記録を見ても、通算犠打は50以下であった。
まあ、その後は1番になったが。
「器用じゃないのよね。足は速かったけれど、盗塁が上手い、って感じでもなかったし。とにかく足の速さで稼ぐ! って感じよね」
「ガンガン走るってことだね」
「でも守備は上手だったわよ! どっかから聞いたかしら? 打った瞬間を見て音さえ聞けば目をつむっても捕れるとか・・・」
「本当に!?」
「いや、わかんないけど。それくらい守備には自信があったと思うわよ、全盛期は」
伊達に5年連続ゴールデングラブではないのだ。
広い守備範囲。
いきなりボールの落下地点にあらわれるスピード。
「忍者」
といわれるのも納得である。
「外野守備が上手い選手は沢山いるし、屋鋪より上手な選手だっているでしょう。でも、印象としては屋鋪なのよね、その守備スタイルからして!」
「なるほどー」
そう、今の選手にはない守備のイメージがある。
もちろん、記憶補正はあるかもしれないが。
屋鋪といえば巨人に移籍したあと、初の横浜スタジアムでの対戦。
激しい風雨の中での最終回、ローズの飛球を捕れなかった時のことだ。
「サヨナラ勝ちは嬉しかったけれど、屋鋪の守備ミスで勝ったのが悔しかったわね。屋鋪の守備はあんなもんじゃなかったのに!」
「あの激しい風雨じゃねえ。そもそも、野球をするようなコンディションじゃなかったし」
「古巣、守り慣れた横浜スタジアムであれは応えたでしょうね。もう!」
横浜を戦力外になった後、ジャイアンツで優勝もできた。
今は鉄道大好きおじさんであり、ベイスターズOBとして時にはイベントにも出てくれる。
「ありがとうスーパーカー! でも、SLトリオの方が本人は好きだったかもね!」