「シーズンはまだ残り2試合あるけれど、そろそろシーズンのまとめに入っていくわよ!」
結乃がデータブックを見ながら言う。
「実際にはもう11月、例年より遅いもんね」
理衣はなぜか遠い目をしている。
「ということで、戦力外となった選手について! 最初は、飛雄馬!」
「飛雄馬選手といえば、元気の良さ!」
「声の大きさはナンバーワンかもね。そういうのは大事よね」
「ファームでも、そういった意味では存在感は大きかったのかもね」
飛雄馬といえば必ず言われるのがコレである。
ただ、元気さだけで生き残れる世界でもない。
「内野はどこでも守れるけれど、ただ上手ってわけじゃないからねぇ」
「今はマルチなプレイヤーが求められるけれど、厳しいね」
「昔だったらそれだけで存在は重宝された部分あるけれど、最近じゃあ皆、色んなポジション守れるものねぇ」
一軍では大和、柴田、倉本が二塁、三塁、遊撃を状況に応じて守り。
バックアップとして中井がいる。
となると、なかなか厳しい。
「ベイスターズは二遊間を含む内野が弱点だから、割って入るチャンスはあったんだけどね」
「実際、一時期は一軍で少し出場したりもしていたもんね」
「ただその時、これは! という結果を残せなかったからね」
「チャンスをつかめなかったかー」
二軍では結果を残す。
でも、一軍で通用するほどでもない。
まさに一軍半で留まってしまったと思える。
「毎年、戦力外候補か? なんて言われていたけれど生き残って、でもとうとう駄目だったわね」
「ドラフトでも、上位で内野手を指名するようになってきたもんね」
伊藤裕、牧と素材型ではなく大学卒の選手を上位指名している。
若手でも知野、森、田部と素材型を確保しており、厳しい立場だったのは本人も分かっていただろう。
「この先どうするかは分からないけれど、ゆけゆけ飛雄馬、どんとゆけ!」
「言うと思った!」
その元気の良さで、どこでも周囲に力を与えて欲しい。