「ロペス選手、退団のニュースが出ているよ!」
理衣が驚きながら言う。
「そういう話も出るわよねえ」
結乃がなんともいえない渋い表情で言う。
色々な声があがるのは当然だろう。
- 精神的支柱
- 頼れるベテラン
- 外国人選手にとっても大きな存在
- 衰えはあるが、守備も打撃もまだまだいける
どれも当然のことだろう。
「球団も一方的に戦力の構想外、というわけじゃないと思うのよね」
「というと?」
「右の代打から終盤の守備につく。他の選手の休養日にスタメン出場、多分そういう立ち位置であれば絶対に居て欲しい選手だと思うのよ」
「そりゃそうだよね」
「でもロペスが望んでいるのはスタメンで常時出場でしょ。競争に敗れたならまだしも、最初からその位置を求められ、おそらく大幅減俸となれば折り合わずに退団、というのも仕方ないわよね」
「そんなぁ」
「プロの世界だからね」
チームとしてマイナスになるのは分かる。
だが、ロペスが常時一塁で、ソトがセカンド、オースティンがライト、佐野がレフト。
この不安定な守備陣、足のない一発頼みの攻撃では苦しい、というのは今季を見ても明らか。
ならば変えていこうとするのも当然の流れなのかもしれない。
「正直、多くの人がいうような、代打中心、終盤から守備固め、精神的支柱でのまとめ役でロペスが納得するかどうかよね」
「プロ野球選手としてまだまだいける、という自負があれば、頷きはしないよね」
「ロペスだって情はあるでしょうけれど、契約、報酬というビジネス面を棄てて横浜に骨を埋める、なんて出来ないでしょ」
「ずっと横浜で野球をやってきたってわけでもないしね」
「みんな都合の良いロペスの起用方法を言っては残せというけれど、ロペスの意思や考えはそこになく、あくまで自分たちが望むロペス像を口にしているだけだからね」
「うーん、厳しい!」
「自分勝手に、こういう役割で残ってもらえば良い、とか、そもそも代打”でも”良いから残ってもらえなんて、それがロペスに対してそもそも上から目線なのよ! 代打”でも”なんて、ロペスがそういうならまだしも、周囲が言うのは失礼千万でしょ!」
日本人扱いになるとはいえ、外国人助っ人であることに変わりはない。
ロペスのプライド、野球に対する意思。
そしてチーム全体のバランス。
ロペスが本当に生まれつき日本人で、ずっと横浜という球団に所属していたならまたロペスの気持ちも違ったのかもしれないが。
ロペスが一塁でいなければどうしようもない、という状況なら別だったのだろうが。
不安定な外野である佐野かオースティンを一塁に回したい。
ソトが残留ならファースト固定したい。
ならばロペスは必然的に控えになる。
「あたしだって残って欲しいけれど、それはやっぱり頼りになる控え、ベンチのまとめ役、としての部分が大きいのよね」
「もう、仕方ないのかな?」
「プロ野球選手は個人事業主、条件が折り合わなければねえ」
さて、これが事実なら来期はまた大変だろう。
特に監督が新しくなり、コーチなどスタッフの顔も変わるかもしれない。
そういうときに、今までまとめていた筒香は既におらず、さらにロペスがいなくなるとしたら。
それでもチームは変わることを選んだのだろう。
ならば、ファンとしては応援するのみ。
別に、DeNAが一方的に冷たくロペスを戦力外にした、なんてことはないのだろうし(多分)