「怪我で悔しいシーズンになった今永ね」
苦い表情を見せる結乃。
「肩、っていうのが心配だよね」
理衣も不安そうである。
チームのエース、のはずが無念の結果に。
#21 今永 昇太
当番試合 : 9
投球回数 : 53
防御率 :3.23
勝利 : 5
敗北 : 3
セーブ : 0
ホールド : 0
奪三振 : 63
「まあ怪我だし、数字に関してはどうこう言わないわ」
「シーズン序盤から、あまり調子が上がらないなって感じだったよね」
「うーん、三振は凄い奪っていたんだけどね。状態はよく分からないわね」
「そのうちよくなるだろう、なんて思っていたんだけどね」
決して物凄く悪かった、というわけではなかった。
ただ、三振は奪うけれど球数が多くなって6回で100球とか、そういう試合が多かった気がする。
「まー、今永の場合はそういう投球スタイルだから仕方ないってところはあるけれどね」
「打たせて取る、っていう感じじゃないね」
「果たしてそれが怪我に影響しているのかどうか」
「早く復帰してほしいけれど、焦っては欲しくないよね」
問題は、肘ではなく肩の故障ということだ。
肘はトミージョン手術など多くの選手が故障⇒手術での復帰を聞くが、肩は結構ヤバめなものも多い。本人の談では、その辺はちゃんと見極めて問題ないと判断して手術に踏み切ったとのことだが、それで不安がゼロになるかといえば、そういうものでもない。
「手術は成功してキャッチボールをしても良いと言われているから回復は順調なんでしょうけれど」
「だからといって、手術前と同じように投げられるという保証はないもんね」
「まあ、それは肘の故障にもいえるけれど。例え手術前と同じくらいスピードが出ても、球質は変わっているかもしれない」
「本当、繊細だよね」
速度が出ていれば復活したわけではない。
球速が出ていても簡単に打ち返されたりするのがプロ野球である。
素人には何がどう違うか分からないが、プロには確実に分かるのだろう。
「とはいえ、今永いないのはやっぱり優勝を狙う上で厳しいわ」
「エースだもんね」
「エースに一番近かった男、だけどね」
「凄い投球見せるもんね」
もちろん、ドラフトの時から故障明け、リスクがあることは承知で獲得したのだが。
なかなか難しいものである。
「投球以外では、21年から選手会長になるわね」
「考え方とかしっかりしているし、ぴったりじゃないかな」
「更に広い視野を持ってほしいわよね、単なるイチ野球選手だけじゃなくて」
「若い人のケアとかもして欲しいし」
求めることは色々と多くなる。
が、まずは怪我を治して投げられるようになること。
「シーズン後半に復帰出来たら・・・・とは思うけれど、勝手な願いだからね。可能なところで戻ってくれればいいわ」
「本当に、無理しないでください!」
今永、そして東。
二人が万全に戻れば再来年の22年こそ、勝負の年なのかもしれない。
そうするためにも、焦らずに。