「負けたわ!」
元気よく結乃が言う。
「完封負けだったね」
理衣は苦笑いだった。
中日との練習試合。
0-3で敗戦した。
「打線の迫力が欠けるのはお互い様だけど、その中でどうするか、よね」
「色々と仕掛けたんだけどね」
ランエンドヒット
セーフティ
盗塁
「まあ、殆ど成功しなかったけどね!」
「伊藤選手がようやく盗塁成功したよね」
「今までまともにやってこなかったチームがいきなりバンバン成功するはずもないわよね」
「まずは選手の意識を変える、ということだね」
技術がなければどうしようもない。
打撃の技術もそうだし、走塁技術、スタート、相手の裏をかく洞察力
「実際、チームの戦い方にマッチするのか分からないけれど、積極的に次の塁を狙う姿勢は忘れないで欲しいわよね」
「そうだよね!」
ソト、オースティン、佐野、宮崎が並んだ打線で、そうそう機動力が使用できるはずないことも三浦はわかっているだろう。
だからといって、打つだけの野球での限界は昨年までで見えているわけで。
「これから3月のオープン戦まで、どのような結果が出るか楽しみね」
「良い結果が出るといいね!」
「いやー、そう甘くないでしょ。今年は負けまくる覚悟を持って見ないとファンは苦しいかもよ!」
「なぜ嬉しそうに言うの!?」
「変革を求めるからよ! 変化を恐れてはいけないわ!」
「偉そうだなあ」
とはいえ。
方向性は理解する。選手達も理解はしているだろう。
結果が成功するか、失敗するかは分からないけれど、動かなければ何も変わらないのだから。
「投手は、上茶谷はまずまず、濱口も失点したけれどそこまで悪くはなかった気はするわ」
「これから調整、だね」
「砂田が軽く打たれていたのが気になるけれど」
「それも、まだこれから!」
「他にも山本選手が強肩を発揮して相手の盗塁を2度刺したし」
「しかも余裕のアウトだったわね」
「戸柱選手も負けずに刺したね」
「奇跡だわ・・・!」
しかし、山本の肩は楽しみでしかない!
苦しみも、野球が出来るからこそ。
楽しもう。