「なかなか、ワクワクしないシーズンねぇ」
梅雨空のように重い雰囲気でため息を吐く結乃。
「新チームになって、なかなかスムーズなスタートにはいかないね」
理衣も首を傾げながら言う。
「そういう問題なのかしら? 勝てていないから仕方ないけれど、三浦が色々と叩かれているわね」
「ファンとしては悲しいよね」
「いや、ファンだからといって思考停止して一方的に擁護しても仕方ないから。意見、批評は別に構わないのよ」
「人格を否定するような誹謗中傷、そしてご本人と関係ない方面への飛び火とか、見ているだけで悲しくなりますね」
まさに。
動かなければ動かないことで批判される。
動けば動いたで批判される。
例え同じことをしても、それでチームが勝っていれば批判も小さくなるだろうが、負けが込んでいるのだから批判は増える。
それは仕方ないことだし、プロである以上は覚悟していたことだろう。
「ただねー、やっぱり他所でも言われているけれど、チームの方針が戦い方に見えないってのはあるわよね」
「キャンプから、いかに得点力を増やしていくか、ってことをテーマに掲げていたよね」
「一朝一夕にできないのは分かるし、レギュラー陣が軒並み鈍足長打系ってのもあるんだろうけれど・・・」
「盗塁出来る選手もいないしね、あとは小技とかも」
スタメンの顔ぶれを見てもそれは分かる。
「でも、代走スペシャリストを目指していた宮本をあっさり落としてあげてこないとか。一軍で走らせないと身につかないものもあると思うんだけど、うーん」
「言われているのは、打者を並べて打つだけ。2番ショートで、1番出たらとりあえずバントは古い、とか?」
「オーソドックスっちゃー、オーソドックスなんでしょうけれど。それで勝てるのはチーム力がある場合よね」
「でも、策をやろうにも出来る選手がいないし、監督も経験不足だし」
「コーチ陣は役立たずだし・・・あれ、詰んだ?」
「いやいや、諦めるの早いでしょ!?」
内部でどのような話し合いや作戦が立てられているのか、こちらからは見えない。
色々と話しているだろうし、作戦も考えているのだろう。
ただ、それが試合の中で見えてこないのがもどかしい。
見せられるだけの実力がないのか、実はそんな見せられるほどの考えや作戦がないのか、わからないけれど・・・
「こういう野球をやるぞ、目指すぞ!! っていうのが見える野球をして、それで失敗して勝てないなら、まだ納得できるというか、理解出来そうな気はするんだけど」
「今はそれが見えない?」
「結局、2番にショートを入れているだけで、あとは去年までと変わらないように見えるからね」
「それで勝てていれば、昨年度までを継承で、ここまで言われていないんだろうけどね」
「開幕6連敗していた頃の方がまだ、なんかそういうのが見えた気がするのよねー」
「外国人選手が戻ってきたから、あまりそういう方向に出来なくなっているのかもね」
「やっぱ、佐野、宮崎といったあたりを変えられないのがねー」
投手出身の監督だからなのか。
それでも、やはり厳しくしてほしい。
あるいは、トップが優しいならNo.2が厳しくしないと、組織としてはイマイチだ。
今はヘッドコーチも厳しさはなく、他のコーチ陣もいわずもがな。
組閣時点で失敗・・・とか、今さら言いたくないが。
「それでも今の陣容でやっていくしかないんだから、そこをどう変えていくかはトップの責任なのよ!」
「なんとか、頑張ってほしいです!」
「ここまで負けが込んだら恐いもんなしと、もう好きなようにやっちゃえばいいのに」
「それで、色が出るかもね!」
外野は好きなように言いますが。
そう言わんと見ていて辛いのですよ!?