「倉本!」
結乃が腕を組んで言う。
「これまた厳しい戦力外通告だね」
理衣もがっくりと肩を落とす。
日本シリーズ進出した2017年は、確実にチームに貢献してくれた。
だけど、貢献以外のやらかしがファンの記憶に強く残ってしまっているのが残念だ。
「とにかく、ファンも多いんだけど、やたら叩かれるのよね」
「目立つミスをしちゃうとね」
「別に守備は下手じゃないんだけど・・・」
「それでも、「あー!」ってなっちゃう、ってね」
努力の人、だったのだと思う。
パワーがあるわけでもなく、足が速いわけでもなく、肩が凄く強いわけでもなく、守備範囲が広いわけでもない。
それでも毎年、考えて工夫してやってきたような感じ。
「打率も3割近く残したりしたしね」
「9番打者で50打点稼いだり」
「エースキラーだったり、広島戦に強かったり」
「本当に色々とあるねぇ」
ただ、コレという強みがなかったのは事実。
タイプ的に、生き残るとしたらヒットを量産するしかなかったろうが、その打撃でも苦戦した。
「選球眼がよいわけでもないし、悩ましい!」
「守備は内野ならどこでも守れるんだけどね」
「ユーティリティだけだと厳しいわよね。若手でユーティリティがいたらそっちに、ってもなりがちよね」
「あと年俸との絡みとかだね」
近年の倉本の成績であれば、若い選手を経験させる方に舵を切る判断も分かるというもの。
「憧れの石井がコーチとしてきたんだけど、一年で終わっちゃったわね」
「それでも、現役続行を希望しているんだよね」
「体は丈夫だしね、まだまだ動けるでしょうし。内野が手薄な球団なら、って思わなくもないけれど」
「ただやっぱり、打撃の数字が悪いのがネックだよね」
「今年は2軍の成績もダメだったしね」
まだまだ燃え尽きていないだろう。
この後もまだまだ頑張って欲しい!