「さて、シーズンも終わったことだし、色々と振り返っていくけれど、まずは戦力外選手からね」
結乃が腕組みをして言う。
「毎年、寂しいけれど仕方ないよね」
なんともいえない表情を見せる理衣」
「まずは平田ね」
「うーん、残念です。中継ぎとして頑張っていたんだけど」
「年齢的なものよね。この年齢になってくると、中継ぎのこのポジションは毎年成績を残さないと、若手にとってかわられるわよね」
「厳しい世界だよね」
中継ぎは負荷も高く、肩や肘の消耗も激しく、ある意味で使いつぶすようなところがある。
更に勝ちパターンではないビハインド要員ともなると、その位置にいつまでもベテランを置いておくというわけにもいかない。
その位置でも結果を残し続ける必要があるが、そうすると年俸もあがってきて割にあわなくなってきたりもする。
難しいところであろう。
「平田と言えばやっぱりルーキーの年のあの事件よね」
「いまだに語り継がれるやつだね」
「巨人戦、5点リードが5点リードに!? ね」
「いやー、あそこからよく立ち直ってくれたよね」
「立ち直ったというのか、もしあれがなかったら、もっと良い成績を残していたかもしれないからね」
ルーキーイヤー、5点リードで登板したものの巨人打線を抑えきれず。
その後に登板した山口もろとも10失点を喫し、終わってみたら5点リードされていたというもの。
ルーキーの初登板で余裕のある点差と思って登板させたのだろうが、見事に裏目に出た。
「そこから苦しい時間が続いたからね」
「それでも良い投球は見せてくれたんだけどね」
「とはいえ、それはビハインドの時。いやー、ビハインドの時は本当に良い投球を見せてくれたわ」
「そういう投手も重要なんだけどね」
信頼を地道に積み重ね、そうしてリードした場面で登板した途端に打たれる。
その繰り返しという感じだった。
「もしかしたらそれも、ルーキー時のことが影響しているかもしれないしね」
「精神的に何か刻み込まれていたとか」
「そうそう、まあ、適正とかだったのかもしれないけれど」
「それでも腐らずにやってきたからこそ、今まで現役を続けてきたんだけどね」
初勝利をあげるのも遅かった。
もしかしたら勝ち星ないままプロを去るのかも、なんて危惧した時もあった。
「この後どうするかは分からないけれど、とにかくまずは横浜ではお疲れ様でしたというところで」
「次でも頑張ってください!」」
とにかく地味で存在感が薄くキャンプでもなかなか見つけられなかったのも良い思い出(?)
新たな場で頑張って欲しい。