「健二朗ね」
遠い目をして言う結乃。
「うーん、健二朗さんまで戦力外になるなんて!」
悲しそうに理衣が言う。
果たしてどうなるか微妙なところではあったと思う。
まだまだ出来るとも思うのだが、やはり年齢的な部分がネックになったのだろう。
「完全な勝ちパターンじゃない便利屋的な立場だし、左腕では石川が出てきたからねぇ」
「ベテランの力も必要そうな気はするんだけどね」
「それも踏まえての判断なんでしょうけれど」
「残念です!」
あとはもしかしたら、新聞記事になった・・・
「健二朗といえばやっぱり大きいのは、あのCSでの牽制よね!」
「巨人さんとの3戦目! 相手の代走の切り札、鈴木選手を牽制アウトだもんね!」
「無死1塁だったし、あれがなかったら盗塁、内野ゴロ進塁、犠牲フライ、なんかで負けてた可能性も大だからね」
「あれは大盛り上がりだったよね!」
初めて進んだCS。
1勝1敗で迎えた第三戦はリードするも追いつかれての終盤は相手の方が押していた。
そこの流れを変えたのが、あの健二朗の一つの牽制球だった。
「現地で見ていたけれど、本当に大歓声だったわね」
「みんな一斉に立ち上がったね!」
「あれは本当に盛り上がったわ」
「あれで、いける! って感じになったよね」
しかし、中継ぎはやはり大変なポジション。
TJ手術をして、復活して活躍もしてくれた。
しかし、復活したとき、他の中継ぎが不調で登板過多となったのがたたったか、また怪我をしてしまった。
そこがポイントだった。
「あのオラつきが見られなくなると思うと寂しいわね」
「ファン対応は良いんだけどね」
「表情変えずに、ファンサするけれどね」
「それも味ということで!」
にこやかな笑顔でファンサされても、逆に怖いかもしれない。
「本人的にはまだ出来ると思っているでしょうし、左の中継ぎが不足している所では役に立つと思うんだけど」
「果たしてどうなるかね」
「まあ、対戦したいとは思わないけれど、もしそういうことになったら全力でいくわよ」
「良い道が見つかりますように!」
ありがとう、健二朗!