「さて、一日たって改めて2023年のドラフトを振り返ってみるわ」
冷静な口調で結乃が言う。
「今年も色々と驚きもありました」
理衣がニコニコしながら言う。
改めて指名を振り返ってみる。
【支配下】
1位 度会 隆輝 ENEOS 外野手
2位 松本 凌人 名城大 投手
3位 武田 陸玖 山形中央高 投手
4位 石上 泰輝 東洋大 内野手
5位 石田 裕太郎 中央大 投手
6位 井上 絢登 四国ILplus・徳島 外野手
【育成】
育成1位 高見澤 郁魅 敦賀気比高 内野手
育成2位 清水 麻成 樹徳高 投手
育成3位 小笠原 蒼 京都翔英高 内野手
育成4位 庄司 陽斗 青森大 投手
育成5位 近藤 大雅 専大北上高 保守
「多くの人は投手メインのドラフトでいくだろうって考えていたけれど、結果をみたら野手ドラフトというね」
「そこが意表をつかれた感じだよね」
「そのせいで今年のドラフトは駄目だった、なんて言う人もいるみたいだけど、そんなん気にしたらダメよ!」
「まあ、人それぞれ思うところは違うしね」
今永、バウアー、石田の3人が抜ける可能性が高い。
さらにここ数年、即戦力で獲得した投手が出てきておらず先発投手が育っていない。
だから投手にいけというのは理解できる。
「ただね、実は野手の方も壊滅的にヤバいのよ。というか、むしろ野手の方がよりヤバイかもしれない」
「そうなの?」
「何せ若手野手でレギュラーを張っている、もしくはレギュラーが見込めるのが牧ただ一人だからね!」
「そ、そう?」
「そうよ。まあ、捕手は山本が出てきて、松尾が二軍でプロスペクトの結果を残しているから、捕手だけは目途がつきかけているけれど」
「他はそうでもない、と」
内野を考えてみれば、牧は良いがいつまで二塁を守らせるのかというのはある。
さらにサードの宮崎は既にベテランの年齢。
ショートは誰もレギュラーを奪えない状態。
一軍がそんな状態にもかかわらず、若手は伸び悩んで一軍にすら上がれそうもない選手ばかり。
「宮崎の後釜が今のところ誰もいないし、牧をファーストへのコンバートも考慮すると二遊間もいない」
「森選手、林選手と獲得したけれど、レギュラーにはまだほど遠いもんね」
「柴田、京田、西浦は既に中堅で伸びは期待できないし、大和はショートの守備自体が既に厳しい状態だし」
「ショートなら、二塁や三塁の守備にも回せるだろうしね、とりあえずショートをとっておけ、ってのはあるよね」
今の状態を考えればショートを守れる有力な選手は毎年のように獲得して、そのうち誰かが使えるようになれば、という感じである。
それもこれも、森が怪我がちであったりするのもある。
更に外野を考えればレギュラーといえるのは佐野だけ。その佐野は守備がかなり酷い。
守備面では桑原が抜けているが、打撃面では苦しい。
そして何より、外野はみんな既に30前後の選手ばかりで20代前半は梶原一人のみ。
打てて走れて肩の強い若手外野手を揃えないと次の代がヤバイ。
「若いチームとかいわれているけれど、スタメン見ると20代前半は牧一人、なんてこともあって、殆ど30代なんてこともあるしね」
「まあ、ねぇ・・・」
内野がソト、牧、宮崎、大和
外野が佐野、桑原、大田
捕手に伊藤か戸柱
これ、20代は牧と佐野だけであり、しかも佐野だって来年は30になる年齢である。
関根、楠本も来年は29、蛯名も27。ぶっちゃけ、もう若くない。
「しかも2軍には現時点でこれといった野手がいないしね。今のうちにどうにかしないと数年後にヤバイことになるわよ!」
「外国人選手も今の時代は厳しいしね」
「それに比べて、投手はまだなんとかなりそうなところはあるのよ」
「そうなの?」
確かに、仮に今永、バウアー、石田の3人が全員抜けたとしたら、短期的には投手がヤバイとも思えるが。
先発は東、大貫、平良、濱口、の4人がまずメインとしてあがるだろう。
そして上茶谷を先発に戻し、新外国人投手を獲得。
小園はまだ怪しいが、深沢、森下は順調に育っており、長い目で見て一軍で投げさせるのもありだと思っている。
怪我していた松本も今季は成長を見せた。
もともと先発していた宮城、先発で見たい石川、などもいる。
「一応、ここ数年で獲得した高卒投手は育ってきているのよね。即戦力で獲得した投手は出てきていないけれど・・・」
「うーん、言われてみると確かに?」
「それに野手よりも投手の方が、やっぱり選手生命も長くいけるような気がするし」
「打って走って守って、というのは肉体的に大変だし、特に打つ方は動体視力の衰えはどうしようもないみたいだしね」
投手陣ならまだ数年はどうにかなるとも思えるが、野手は2~3年でこのままならヤバイことになる。
「それに加え、今季の戦いでの得点力不足も課題に捉えているでしょうしね」
「確かに、足もあってパワーもあるタイプを獲得しているもんね」
チームとしての意図が見える指名であり、即戦力先発タイプの投手が殆ど獲得できていないことは確かに痛いが、それを踏まえても今回の指名と思いたい。
投手は、森の獲得など外からの補強も考えているだろう。
「ということで、私も最初は意外だったけれど、最終的には納得したドラフトだったわ」
「外野が勝手に言っているだけだけどね」
「いずれにしても皆、入団してくれて活躍してくれるといいけどね」
「お待ちしています!」